第7話 異星人は地球人の夢を見るか

 

 アイツの睡眠事情に興味など微塵もないのだが、最近、休憩時間に寝ているシロホシをよく見かける。

 それが宇宙人にとってどういう状態なのかは非常に気になるところではある。

 休憩時間になると、奴はすぐさま机に突っ伏す。

 傍目には普通に寝ているように見える、小さいながら寝息も聞こえる。

 すぅすぅと寝息たてて眠り始める。

 どこかに起きてる証拠がないか探す。

 するとそこに、友人の御手洗みたらいが後ろから脅かしてきた。

「うおっ、なんだお前か」

「なんだお前かはないだろー。三鷹ってば冷てーんだから」

「別に冷たくはないだろ」

「というか、こんなことするの俺くらいだろ? 他にやってくるような奴いんの?」

「それは……宇宙人とか」

「うん? どうした三鷹、急に電波キャラ始めたのか?」

「いや冗談だ、笑え。というか要件はなんだ」

「要件なくちゃ話に来ちゃいけないのかよー」

「いや、今俺は忙しくてだな」

 主に宇宙人観察で。

「そんなにシロホシさんの寝顔を見ていたいのか」

 !?

 バレ……てる……? これはマズい、女子の寝顔を覗き込む変態のレッテルを張られるのは非常にマズい! 社会的に死ぬ可能性がある。

 俺は御手洗の首に手をまわして顔近づけた。

「いいか御手洗、よく聞け」

「お、おう」

「実はな、シロホシは実は寝てないんじゃないかと俺はふんでる」

「は、はあ」

「(宇宙人的に)不思議なのが授業の始まりが近づくと自動でパッと起きるところだ。チャイムが鳴る前に起きる、不自然だと思わないか? つまりだな、俺はシロホシが本当は寝ていないのではないかと疑っている」

 だから見ていた、学術的見地からであった、決してやましい気持ちなど微塵もなかったと言える。

 そう御手洗に伝えると。

「はぁ、なんでもいいけど、どっちにしろいい趣味じゃねぇな」

 バッサリ言われてしまった。

 休み時間の終わりが近づき、シロホシが目を覚ます。

 御手洗が「ホントだ……」と小声で一応の理解を示してくれた。

 とりあえず、しのげた……気がする。


 再びの休憩時間。

 また突っ伏すシロホシ。

 寝息を立てている。

 目がいいらしい俺でも、それが狸寝入りかどうかまでは分からない。

 その時だった。

「ケイジ……くん……」

 …………は?

 なんで、寝言で俺の名前?

 まさか俺の夢を見てる?

 ちょっと待てちょっと待て。

 なんでこんなドキドキしてるんだ俺は!?

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