番外編
番外編 夏へのロケット
「海だー!」
「う、海だー……」
元気よく叫ぶ三鷹と恥ずかしそうなレイラ。
「ははは、二人とも元気だねぇ」
そう話すのは三鷹の叔父である。
叔父は車で二人を砂浜まで乗せていってくれたのだ。
「じゃあ僕は、この先の店で買い物してるから、お二人さんはごゆっくり。あ、なにかあったら連絡してね」
そう言って車を出す叔父さん。
すでに荷物は降ろしてある。
「それは何?」
レイラが聞く。
「ペットボトルロケット、俺の昔からの趣味でさ」
「ロケット? 宇宙まで行くのそれ?」
「いや、そこまでは行かないけど……けっこう飛ぶんだぜコレ」
そう言って発射台の位置を調整する三鷹。
「でもなんで海で、ペットボトルロケット?」
「……夏だし、雰囲気作り的な」
苦し紛れだった。
本当になんとなくだった。
もっと適した場所があるだろうに河川敷とか。
三鷹はただ夏を満喫したいという理由だけでここにしたのだった。
それでも白いワンピースに麦わら帽子のレイラを見ながら三鷹はこれだけで来て良かったと思った。
鏡面の髪が揺れる。
「作業、止まってるよ?」
ラピスラズリの瞳に見つめられ、慌てて作業を再開する。
水の入ったロケットを発射台にセットする。
空気をポンプで送り込んでいく。
「大変そうだね? 手伝おうか?」
「平気平気、いっつもやってるし」
十分に空気が入ったところで。
「んじゃカウントダウン!」
3 2 1
留め金を外すと同時に勢いよく飛んでいくロケットは綺麗な放物線を描き砂浜に突き刺さった。
「どう? 結構飛んだだろ?」
「うん。すごかった」
レイラは微笑ましいものを見るような表情で三鷹を見ていた。
「……やっぱ、レイラの星のがもっとすごい物、いっぱいあるのかな」
「ううん、そんなことない。こんな遊び初めて見た。すごく新鮮だよ?」
なんだか気を使わせてしまったと後悔する三鷹。
彼はきっと喜んでもらえると思っていた。
「ロケット……地球人はアレのもっと大きいので宇宙に行くんだよね」
「まだ月までしか行けてないけどね、そういえばレイラ達はどうやって地球へ? あのUFO?」
屋上の輝きを思い出す。
「うん、あれの中でコールドスリープしてた」
「ワープとかじゃないんだ」
「そんな高等技術――星にはまだないよ」
「まだ。か。ははっ」
急に笑い出す三鷹。
少し驚くレイラ。
「どうしたの急に笑い出して」
「いやさ、今の話、地球人と宇宙人の会話っぽいなぁって」
「なによ、そのまんまじゃない」
ちょっと怒った顔した後、レイラもつられて笑い出す。
「二本目、今度はレイラが飛ばしてみなよ」
「分かった、やってみる」
夏休みの始まり。
笑いあう二人の地球人と――星人の想いを乗せたロケットが澄んだ青空を飛んでいった。
ファーストコンタクト=オンリー=モノローグ 亜未田久志 @abky-6102
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