第4話 @?*!


 特例の観察は続いている。

 変化は何もない。

 やはり目以外は、事前調査で得た情報と同じ、一般的な地球人の性質と変わりない。

 しかし、観察していると気づく事がある。

 彼が、彼だけが、授業中、目を細めている。

 まるで何かが眩しいように。

 他のクラスメイトにそのような状態の者はいない。

 眼のいい彼の事だ、常人とは違う世界を見ているに違いない。

 いったいあの教科書に、なんの秘密があるというのだろう。

 気になる。非常に気になる。

 だが直接聞こうにも、どう切り出したらいいのか分からない。

 実は言うと、観察対象への積極的な接触には制限がある。

 あまり頻繁には行えない。

 もう異星人であるとバラしてしまった後だ。

 これ以上の接触は制限に引っかかる。

 制限に引っかかると罰を受ける事になってしまう。

 具体的に言えば――が――で――――される。

 辛い、とても辛い。

 なので私は、を強める事にした。

 私の――色の髪の毛を使い。

 光通信を行うのだ。

 どんな暗闇でも輝くことの出来る、この髪ならば、それが可能だ。

 そうあくまでアピールであって接触ではない。

 そしてアピールに気づいて向こうから話しかけてくる分には『積極的な接触』にはならないのだ。

 我ながら頭がいい。

 さあ、気付くんだケイジ君! さあさあ!


 ……一向に効果が見られない。

 より目を細めたぐらいだろうか。

 何故だろうと頭の中で考えながら、休み時間、クラスの女子達と「髪の毛、綺麗だね」「コンディショナー何使ってるのー?」「SAKURAとか?」「あはは! それシャンプーじゃん!」などという会話を適当に受け流していた。

 私達――星人の髪の毛というのは、そもそも、地球人のソレとは全く役割が違う。

 というか、地球人の髪の毛という部位はなんのために生えているのだ。

 伸びすぎて邪魔になる事もあるそうじゃないか。

 なんて不完全な生き物なんだ。

 非効率的なモノを頭に乗せていて苦労するなと同情さえ覚える。


 いやそんな事はどうでもいい。

 ケイジ君だ、ケイジ君。

 休み時間に入り、皆が先生の方へ注目を向ける。

 私はいつも通り、光通信を開始する。

 すると、その時だった。

 ケイジ君がそっと私の机に何かを置いた!

 私はそれすぐさま読んだ。

『髪の毛眩しいんだけど』

 

 私の顔は今あまりの恥ずかしさに――色に染まっている事だろう。

 そうか、人間は光通信を眼で読み取れないんだった……。

 彼の瞳ならもしやと思ったが、ああ、恥ずかしい……。

 ケイジ君が目を細めていた理由が自分だったなんて。

 これは観察日誌には書かないでおこう……。

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