やるせない泪が、あたたかい涙に変わる

それはホロリと零れるきれいな涙じゃない。目の奥にじわりと滲む、奥歯を噛みしめるような泪です。心をぎゅうっと縛られる、幼い頃のやるせない記憶。それでも必死で毎日を生きてきた健気さ。青春の苦い過去。
つらい話が多い。でも、読了後の気持ちがこんなに清々しいのは、色んなことを踏み越えてきた大人の視線で語られるから。その視線は、弱さも悔しさも悲しさも、全部包み込んで、それでも大丈夫だと励ましてくれるようです。
迷った時、苦しくなった時、逃げたくなった時、このエッセイが助けてくれることでしょう。
そして、やるせない苦い泪は、きっとあたたかい涙に変わっていることでしょう。

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