もぐらの泪

星都ハナス

第1話 もぐらの泪

   目立つのは好きじゃないのと

   茶色着て 舞台の端っこ

   もぐらの泪

   

 私の小学校は毎年収穫祭があった。

 春に植えたもち米、さつまいもの苗。

 秋に稲刈りをして、脱穀。芋掘り。

 学校にある給食室で大学芋が作られた。

 もち米は臼と杵でおはぎへと変わる。

 40年も昔のはなし。

 お腹がいっぱいになるとクラスごとに

 出し物が始まる。

 まず、みんな劇のために仮装する。

 当時流行ったドラマ、アニメ、何でもいい。

 私のクラスは西遊記だ。

 夏目雅子ではない。志村けんの人形劇の西遊記だ。孫悟空、猪八戒

 沙悟浄。和尚さん。

 みんななりたいものに仮装する。

 収穫祭の前に配役を決めた。

 主役、敵役の妖怪たち。馬は四人だ。

 次々に決まる。クラス全員出なくてはいけない。あのニンニキニンニンニン

 のリズムに合わせて踊る。

 裏方などいない。女子たちは美しい妖怪になりたがった。

 役がない。配役したくても登場人物が少なすぎる。37人はいる。

 10人ほど困った。

 周りで踊る、動物になればいいと誰かが意見した。ウサギ。シカ。もぐら。

 私は目立つのは嫌だからともぐら。

 当日、家にあった茶色い服を着た。

 お婆さんみたいとみんな笑った。

 もぐらになりきれなかったのは。

 

 10才の多感な少女。この暗い人格を作り上げたのは自分なのか?

 

 みんなの前では泣かなかった。

 

 恥ずかしくて、辛くて、舞台の端ではにかむ私の心。作り上げられた私の心は泪で溢れそうだった。

 

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