先生と生徒の恋愛ものと聞くと背徳感がありますが、そこは健全な胸キュン純愛物語が得意な遊井そわ香さんです。ヒロインの友那は突っ走りそうな元気いっぱいな女の子なのですが、ちゃんと理性を持って冴木先生への感情を抑えています。相手の冴木先生も今の所(第30話)は友那のことをどう思っているか分かりませんが、友那にとても親切にしていても、ちゃんと一線を引いています。その分、クズ元彼氏とかクズ先生が出てきて友那と冴木先生の関係の健全さが際立ちます。
それだけなら、先生と生徒が障害を(いずれ)乗り越える(はずの)ただの純愛物語なのですが、友那の前世のめぐみと冴木先生が曖昧な関係のまま悲劇で終わってしまった恋の事情も絡んできます。このトラウマと、先生と生徒の間のハードルを2人がどのように乗り越えて結ばれるのか(もちろん順当に友那卒業後のはずです)、続きが楽しみです。
前世の記憶を持つ女子高生友那は前世で交流のあった歴史教師の冴木先生の事が気になって仕方ありません。
その想いは、徐々に恋へと進展していくのだが……。
という、ここまではよくある先生×生徒の恋愛ものです。
が、この作品は一味違います。
先生と生徒の間に、確実に壁があるのです。
それは、倫理観という壁です。
良くある溺愛ものでは、先生と生徒は秘密の関係になり甘々な時間を過ごします。
が、この作品ではそれはタブーとさえ見られている関係なのです。
実際の世界では、そうじゃないですか。先生が生徒に手を出したら懲戒解雇です。下手したら逮捕されます。
それをリアルに描きつつ、なおかつジレジレでキュンキュンなストーリー展開なのです。そこには作者遊井そわ香様の文章の巧さがあります。
「そうだよねぇ。そこは大人としてはそうなるよねー」
「そうだよねぇ。そこは受験生ならそうなるよねー」
って、うんうんと頷きながら読んでしまいます。
それでいてキュンキュンする場面もあったりするものだから、もう、ね。
ジレジレは物凄く感じますし。
とにかく没頭して読める作品です。倫理観に抵触する表現もありません。倫理的にアウトな人間はきちんと成敗される作品です。
オススメです。ぜひご一読いかがですか?
主人公の及川めぐみは、冴木裕史と花火大会を見に行く約束をしますが、果てせぬままに事故で死亡。しかし、渡瀬友那として生まれ変わった先で、めぐみの記憶を思い出します。さらに、15歳年上の教師となった裕史と再会する、という物語です。
だれることなく読み続けられる描写が美しく、ついのめりこんでしまいます。
無気力感が漂うようになってしまった裕史ですが、めぐみへの想いを拠り所にし、それに殉じて生きるしかなかったのではないかなど、想像が膨らみます。
11話時点ですが、裕史はめぐみと友那のどちらを見ているのか、もし、裕史が二人を重ね合わせたとしたらどのように折り合いをつけようとするのか、個人的に注目です。
まずメタ的な表現になりますが、設定が非常に斬新で面白い。
転生や生まれ変わり、前世の記憶などは、さほど珍しくもないのですが、前世での死は非常に切なく残念な最後でした。
それに加えて生まれ変わった世界線では、なんとその相手は禁断の恋!!
もうそれだけで既に切ないんですよね。
しかし、その切なさを打ち砕くかのような友那の行動に思わずびっくり……いや、ほっこりさせられます(笑)
とにかく、彼女の行動は、毎話予想の斜め上を行きます。
引き気味の先生に対してグイグイ迫る友那の様子は、ハラハラですね。
また、何気ない日常の一コマさえも生き生きと描かれており、その描写力は特に女性読者に共感を呼ぶのではないでしょうか。
作者様の手腕により、全体的に非常に読みやすく、飽きさせない。
今後の展開も予想が付く、というか、色んなルートが予測され、どこに転がってもいいお話になるんじゃ? と思えるから不思議です。
ただ、コメント欄を拝見した際に、一部の読者が誤読をしているように見受けられる箇所がありました。
そのため、僭越ながら改善の余地があるのかもしれないと感じました。
もっとも、僕自身は誤読を誘うような部分は見受けられず、むしろ明快な表現だと感じましたが、読解力には個人差があるため、もし改善できる箇所があれば、さらなる読者層の拡大につながるのではないかと思いました。
全体を通して、この作品は高い執筆力と瑞々しい感性を持つ一作に仕上がると感じています。
今後の展開も、目が離せません!