出逢いはその心を暖め続ける

生まれながらに不思議な力を持っていた少女。それゆえに疎まれた彼女は、雪と氷に閉ざされた『さいはての島』に捨てられてしまう。今にも消えそうな彼女の命を救ったのは、その土地に自らを封印していた、優しい魔物だった。

その魔物は、氷狼と呼ばれている。強大な氷の魔力を持つ彼は、決して人界に棲まうことができない。その力は、夏には冷たい雨を、冬には豪雪をもたらしてしまうから。彼はそれを望まない。彼は人間が好きだったのだ。

後に、少女には救いの手が差し伸べられる。彼女の力は特別なものであり、これからは然るべき保護が与えられるという。そして彼女は告げられる。あの『さいはての島』での出来事は忘れてしまえと。

それを断固として拒絶したとき、ある意味では彼女の、そして彼の〈生〉は始まったのだ。彼女たちが辿る道のりは、甘いものかもしれないし、苦いものかもしれない。楽しいものかもしれないし、哀しいものかもしれない。でも、それこそが生きるということ。そのあり方を想像してみることは素敵なことではないだろうか。ぜひ、彼らの行く末を、その目で見守ってあげていただきたい。

別れはいずれやってくる。
輝かしい時間の名残とともに、思い出を噛み締めるときがやってくる。
それこそが幸福の証明。その甘さは舌先に残り続け、その暖かさは氷った心を暖め続けることだろう。

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