眠れぬ夜には、恋歌を

作者 眞城白歌(羽鳥)

234

80人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

こんなに寒い舞台なのにどうして心が温まるのだろう……、という優しい物語です。

不思議な力を持っていた少女が周りから疎まれて「さいはての島」に送り出されて捨てられてしまうところから物語が始まります。
ただ救いは、まだ少女の心は、他者からの暖かさを受け入れられるくらいには、凍っていなかったこと。
出会った氷狼のセンは、永遠を氷に囲まれた「さいはての島」で生きる存在ですが、非常に優しい心の持ち主。
彼らの一夜の邂逅が、少女の命と心を救いました。ひょっとしたらセンの心も救ったかもしれません。
あまりセンの本心は書かれていないのですが、おそらくきっと彼も、言葉の端々から感じるに、優しい性格とその暴力的でさえある権能ゆえに他人に譲ってばかりで、ついには人の来ない場所に居を定め、「寂しい」という感情を抱いていたでしょうから。

最後は二人は宿命に抗えないのですが、だからこそじんわり来ました。
きっと一回「生きた思い出」を抱けば、無為は無為にならず、永遠の時を生きることができる。
そんなことを考えさせられたとても素敵なお話でした。

★★★ Excellent!!!

生まれながらに不思議な力を持っていた少女。それゆえに疎まれた彼女は、雪と氷に閉ざされた『さいはての島』に捨てられてしまう。今にも消えそうな彼女の命を救ったのは、その土地に自らを封印していた、優しい魔物だった。

その魔物は、氷狼と呼ばれている。強大な氷の魔力を持つ彼は、決して人界に棲まうことができない。その力は、夏には冷たい雨を、冬には豪雪をもたらしてしまうから。彼はそれを望まない。彼は人間が好きだったのだ。

後に、少女には救いの手が差し伸べられる。彼女の力は特別なものであり、これからは然るべき保護が与えられるという。そして彼女は告げられる。あの『さいはての島』での出来事は忘れてしまえと。

それを断固として拒絶したとき、ある意味では彼女の、そして彼の〈生〉は始まったのだ。彼女たちが辿る道のりは、甘いものかもしれないし、苦いものかもしれない。楽しいものかもしれないし、哀しいものかもしれない。でも、それこそが生きるということ。そのあり方を想像してみることは素敵なことではないだろうか。ぜひ、彼らの行く末を、その目で見守ってあげていただきたい。

別れはいずれやってくる。
輝かしい時間の名残とともに、思い出を噛み締めるときがやってくる。
それこそが幸福の証明。その甘さは舌先に残り続け、その暖かさは氷った心を暖め続けることだろう。

★★★ Excellent!!!

凍てつくような白い闇を、孤独な少女は歩いていく。
ついに力尽き倒れ込む彼女を優しくすくい上げたのは、孤独という感情さえ知らない氷の獣だった。

ともすれば相手を破滅させる共依存になってしまいそうな危うさを秘めた展開でしたが、相手を思うからこそ別れを告げることができる。これって溺愛よりもはるかに愛だと思うんです。
寂しさと悲しさが手をつないで二人を会わせたんだ、なんて歌がありましたが、この話を読んでその歌詞が浮かびました。

哀しいままでは終わりません。
読み終えたとき、きっとこの冬の空気のように清々しい気分に満ちていることでしょう。

寒さ厳しいこんな季節だからこそ読んでほしい一作です。

★★★ Excellent!!!

不思議な力を持っていたが為に忌み嫌われ、死を目前にした少女が出会ったのは、さいはての島に住む氷狼セン。

孤独を知る二人は互いを想い合い、心を温め合います。

異種族間の恋愛という、ともすると悲恋になりがちなテーマを、心温まる純愛に昇華した作者の手腕は見事と言わざるを得ません。

寒い季節にピッタリの異種族恋愛ファンタジー、必見です。

★★★ Excellent!!!

これこそ異世界ファンタジーにおける模範的恋愛と言えるでしょう。
恋愛小説といえどもファンタジーなのだから、そこには現実とはかけ離れたまったく別の「異世界ならでは」の日常生活が在るはすなのです。それを活かしながらも、リアリティを壊す事なく読者の心をときめかせるような恋愛を描いてもらいたい。それが読み手としての本音でございます。

この作品は見事その期待に応えてくれました。
氷狼精霊センと一人ぼっちの少女が出会い、孤独に生きた二つの魂が互いを求める。なんと美しい物語でございましょう。氷雪の世界しか知らぬセンが、それでも少女を想い試行錯誤して彼女を助ける優しさ。彼女の将来を案じ、人の世界へと帰るよう勧める聡明さ。心を打つものがありました。そして同時に、孤独しか知らぬ者が己の不遇に気付きもしない侘しさがこの作品にはありました。
氷の牢獄で独り眠り続けるセンは、本当の意味で人間を好きになれるのでしょうか?

わずか六千字程度でありながら、ロマンあふれる異世界の小旅行へと誘ってくれる名作。
ファンタジー好きであれば、是非!

★★★ Excellent!!!

 忌み嫌われ、疎まれて捨てられた少女と、人に危害を与えてしまう程強力な魔法を持った氷の魔物。ふたりは出会い、種族を越えて互いの孤独を埋めていく。

 ふたりが過ごした時間は、魔物にとってみるとほんのわずかな時間だったかもしれない。でも、その時間は幸せだったのだろうと最後の場面が知らせてくれる。どんな風に人生を全うしたのか、きっと楽しい時を刻んできたのだろう、などと想像が膨らんでしまう。

 残された氷の魔物は、再び孤独の中に沈むのでしょうか。いえ、その孤独を凌ぐほどの大きな愛で満たされているはずだと、そう思いたい。とても優しい愛に溢れた作品。

★★★ Excellent!!!

氷に閉ざされた世界なのに、心が温かくなるお話です。
九つの魔物や竜族など、気になるキーワードがたくさん!この世界観をもっと味わいたい気持ちになります。

センの心に温かな光が灯った終わり方が、とても良いです。
孤独しか知らないままと、愛しい者を想って過ごす時間とは、違いますよね。

死はお別れであり悲しいはずなのに、幸せな気持ちにさせる物語です。

★★★ Excellent!!!

孤独な少女が氷狼と出会うところから物語は始まる。

設定が活かされた、ファンタジーならではの葛藤や壁が描かれており、細部まで創りこまれた世界観が伝わってきます。
異種族だけれど心が通じて、異種族だから越えられない壁があって。

『だけど』と『だから』の果てに、導き出された最大公約数。

それが読後に温かな感情を残してくれました。

心がぽかぽかする異世界ファンタジー。ぜひご覧いただきたいです。

★★★ Excellent!!!

本作で多用される詩的で優雅なレトリックの数々は、幻想的な世界観と溶け合って一つとなり、キャラクターの純粋で真っすぐな想いを余すところなく我々の心に伝えます。
それはまるで印象派の描き出す風景画を思わせるような繊細な筆致。
どこかあやふやでありながら、どこまでも真実であることを我々に予感させます。
六千字という短さも、できる限り無駄を省いた結果としてであり、物足りなさは一切ありません。
むしろその分純度が高まっており、シンプルかつソリッドな読後感を得られることは、間違いないでしょう。

★★★ Excellent!!!

 一文一文が宝石のような作品です。この世界観が好きなこともありますが、静かな夜にゆっくり読みたいお話です。
 人間と魔物の出会いから物語は始まります。互いの価値観やあり方、持っている時間も違う二者が互いを同じだと思い、惹かれ共にあろうとする姿は美しいです。
 華々しく絢爛豪華なファンタジーではありませんが、雪のように静かで無垢な美しさを求める人にはきっと楽しんでもらえると思います。

★★★ Excellent!!!

孤独にうちひしがれた少女と、孤独を受け入れた氷狼。
凍てつく世界で奇跡のように出逢い、そして……。

ふりつもる雪のように静かに綴られる物語。
その中に焚き火のような優しいぬくもりと慈しみが織り込まれています。

冬にこの物語を見つけられたあなたは幸運です。
あたたかい飲み物を用意して、ぜひゆっくりとご覧ください。

★★★ Excellent!!!

人に受け入れてもらえない少女。
人の為に人から距離を置いた獣。

その両者が、優しく交わり。
そして、恋に至る話です。

恋に落ちる、ではなく。至ったのです。

そして、その熱を。冷ますことも覚めることもなく……。


短編ゆえ多くは語れませんが。
どうぞお読みくださいませ。

★★★ Excellent!!!

以前から読ませていただいてから、とても好きな作品です。

主人公の少女が絶望を抱えて出会った氷の魔物に恋をするお話。
人と生きる場所も時間軸も違う魔物は、果たして少女とどのような結末を迎えるのか。

ぜひぜひ読んでみてください。

個人的に魔物の氷狼さんが好きです。
もふもふ。
わんわん。