【企画入賞レビュー】その愛は極寒の地でも凍てつかない

これこそ異世界ファンタジーにおける模範的恋愛と言えるでしょう。
恋愛小説といえどもファンタジーなのだから、そこには現実とはかけ離れたまったく別の「異世界ならでは」の日常生活が在るはすなのです。それを活かしながらも、リアリティを壊す事なく読者の心をときめかせるような恋愛を描いてもらいたい。それが読み手としての本音でございます。

この作品は見事その期待に応えてくれました。
氷狼精霊センと一人ぼっちの少女が出会い、孤独に生きた二つの魂が互いを求める。なんと美しい物語でございましょう。氷雪の世界しか知らぬセンが、それでも少女を想い試行錯誤して彼女を助ける優しさ。彼女の将来を案じ、人の世界へと帰るよう勧める聡明さ。心を打つものがありました。そして同時に、孤独しか知らぬ者が己の不遇に気付きもしない侘しさがこの作品にはありました。
氷の牢獄で独り眠り続けるセンは、本当の意味で人間を好きになれるのでしょうか?

わずか六千字程度でありながら、ロマンあふれる異世界の小旅行へと誘ってくれる名作。
ファンタジー好きであれば、是非!

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