本能が不敗である事を渇望し始めます

 重たいな状況を、冷徹な描写が切れ味よく表現しています。

 異世界に放り出された――転移という二文字では足りないと感じるため、敢えて放り出されたといいたくなる、正しくサバイバルです。

 未知の怪物、未知の世界、常識が通用しない場面に出くわした時、どうしても邪魔をしてしまう厄介な理性、プライド…その全てが、画面に向かって「そうじゃない」と思わずいってしまう程、物語に引き込みます。

 そんな世界で、才能を開花させていくダブル主人公の存在に、私は悲哀、哀愁を覚えてしまいます。

 主人公二人が覚醒させていく才能は、この弱肉強食の世界で生き残るためには、絶対に必要な才能だと思います。

 思いますが、その才能をもってしても現実は厳しく、両手で抱えきれずに零れ落としてしまうものが沢山あります。それに対し、誰もが認める優れた才能であるのに、それを優れていると誇れない…いや、二人は決して誇ったりはしないけれど、誇る余裕なんてないくらい必死な様子が描写されています。

 読んでいく内に、自分の中にある本能が、この世界で、主人公二人に負けて欲しくないと訴えてくるのを感じました。

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