手段は違えども目的は同じ、だが相容れないのは男故か、あるいは・・・

もし、普通の、何の特殊な力も持たない高校生たちが異世界に飛ばされたらどうなるのだろうか?

その質問の大凡の答えは、この小説に書かれている通りであろう。

そこは是非読んで確かめて欲しい。

しかし、それは、決して明るくて楽しくて愉快なものばかりとは言えない。

偏に、ダークファンタジーとも言えるこの小説の面白い点は、一般的な高校生たちの死に様ではなく、むしろ”生き様”である。

右も左も、風習も通貨も分からないこの世界で、元の世界に帰るという目的を胸に一つ一つ懸命に生きる高校生たちの姿こそが読んでいて面白い。いや、彼らの苦しさを読み取るとするならば、ここは魅力と言っておこう。

また、その魅力の一つに、高校生、特に主人公たちの葛藤もある。

「朱に交われば赤くなる」と言うように、どうやら異世界に交われば、そこに住む人間に近づくのかもしれない。

この異世界を自分の世界とは無関係なものとして割り切れるかどうかが、この先の主人公たちの顛末に繋がるような気がして、楽しみでならない。

最後に、この小説を引っ張って行くのは二人の相反する主人公たちかもしれないが、この小説を彩るのはそんな主人公たちに関わる人々、通称モブに思える。

案外、ことの真実を察する力はそのモブにこそ備わっているのかもしれないと思わせる場面がちらほら存在し、そこに何とも惹かれる。

是非そこら辺にも注目して、読み進めていただきたい。

では、願わくば、作者がこのキャラクターたちの命を弄ぶ神ではないことを切に祈る。

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