紙一重であちら側にいる彼らと、こちら側にいる我らの幸運
- ★★ Very Good!!
サスペンスホラーというタグに偽りなく、独特のスピード感でスリリングに展開される物語が、所々、主観の変わる一人称によって強調されているように感じました。
彼らはよくいえば自由に、悪くいうならば自分勝手に生きています。親しい相手に対し、過剰ともいえる対応をしたり、死を極端に怖れている印象を受ける反面、生に苦痛を感じているような印象を受けたりします。
もし人生を、生まれる事で始まり死ぬ事で終わる活動であると定義すれば、生を嫌い、死を怖れている彼らの人生とは、どんな言葉で表せるのだろうか、と考えさせられました。
しかし、生まれてきた事が間違いかといえば、そうではないと感じる絆が、登場人物それぞれにあります。
アンビバレンス、コンフリクト…そんな言葉が浮かんできます。
そして、ふと題名に気付きました。
敗者の街――敗者とは、何をして敗者というのか。
死に対して恐怖を感じても、それは漠然としたものであるし、生きづらいと感じても、特別な苦しみを抱かない私たちの「逆」を単語ひとつで表すとすれば敗者なのだ、と感じました。
それら重い考察が浮かんでしまう本作ですが、その文体にあるのは醜さではなく、美しさです。
美しいからこそ、サスペンス、スリラー、ホラーなのです。