紙一重であちら側にいる彼らと、こちら側にいる我らの幸運

 サスペンスホラーというタグに偽りなく、独特のスピード感でスリリングに展開される物語が、所々、主観の変わる一人称によって強調されているように感じました。

 彼らはよくいえば自由に、悪くいうならば自分勝手に生きています。親しい相手に対し、過剰ともいえる対応をしたり、死を極端に怖れている印象を受ける反面、生に苦痛を感じているような印象を受けたりします。

 もし人生を、生まれる事で始まり死ぬ事で終わる活動であると定義すれば、生を嫌い、死を怖れている彼らの人生とは、どんな言葉で表せるのだろうか、と考えさせられました。

 しかし、生まれてきた事が間違いかといえば、そうではないと感じる絆が、登場人物それぞれにあります。

 アンビバレンス、コンフリクト…そんな言葉が浮かんできます。

 そして、ふと題名に気付きました。

 敗者の街――敗者とは、何をして敗者というのか。

 死に対して恐怖を感じても、それは漠然としたものであるし、生きづらいと感じても、特別な苦しみを抱かない私たちの「逆」を単語ひとつで表すとすれば敗者なのだ、と感じました。

 それら重い考察が浮かんでしまう本作ですが、その文体にあるのは醜さではなく、美しさです。

 美しいからこそ、サスペンス、スリラー、ホラーなのです。

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