血汐燃ゆるは現世のみ

作者 秋保千代子

悪鬼の類は都にあらず、人の心に棲まうものなり。

  • ★★★ Excellent!!!

 魑魅魍魎は、都の外だけにあらず、御殿の中にも渦巻くもの。

 愛憎にて編まれた籠より飛び立てぬ蝶の、その羽に刺さりし針を抜くのは、木か岩かと言わんばかりに無骨な男の指先か。

 政に翻弄され、望まぬ結婚を強いられ、寄り添えぬ気高さと実直さ。
 しかして不器用ながらも、はらりはらりと互いの心の包み紙を解いていく二人の様は、いじらしく我々読者の胸を打つ。

 権力に胡座をかき、雅にうつつを抜かす男の愚かさ。
 時代に翻弄され、嫉妬にしがみつく女の浅ましさ。

 ときに魔を生む蠱惑的な輝きの中にあって、大事なものを守る為に血汐を燃やすその姿の美しさは、作品の中にあって朱に映える。

 舞う蝶の、羽を休める先は、いずこ——?

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