帰蝶が素敵です

秋保さんの長編は三本読みましたが、今回は特にヒロインがよかったです。
この作品、随所に読者を飽きさせない工夫が織り込まれていて(主に脱ぐという点んで……)ついそっちに目がいってしまうのですが、しかし私には今回は帰蝶でした。

こういうタイプのもともとあんまり興味がない人同士の結婚から始まる恋愛ものって、明治以降のお見合い系の話ではわりと見るパターンかもですが、これまではあんまり良さがわかりませんでした。この話を読んで初めて、ああこういうところに面白さがあるのか、こういう風に二人が寄り添っていくのか、というのを理解しました。

帰蝶は気も強いし自分の行動を自分から決めていきたいタイプでしょうから、最初はかわいそうだな気の毒だなという気持ちで読んでいたのですが、ただ義高との距離感がすごく丁寧で、ちぐはぐな二人が少しずつ隙間を埋めていく感じがよかったなです。

読了してほっと胸が暖かくなる、素直な秀作だと思います。
読めてよかったです。

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