へいわなせかい

 へいわなせかい


「イチョウたちは、なんでこのまちにきたの?」

地殻変動ちかくへんどうです。全員ぜんいんたすかるには、ほかのまちくしかありませんでした」

 アサダは、かんがえるようなしぐさをしました。

まちのひろさと、ひとのかず計算けいさんしなかったの?」

対話たいわできるかどうかは、はなさなければわかりません。そういうものらしいです」

 アサダが、右手みぎてをまえにだしました。

 これまでほほえんでいたイチョウが、ふしぎそうなかおになりました。

武器ぶきをもっていないっていう意味いみで、かるくにぎるらしいよ」

 あくしゅをったイチョウがかんがえます。

 ふたりは量子りょうしコンピュータというおなじしくみをつかっているので、結果けっかはほとんどおなじになります。

 イチョウも右手みぎてをまえにだしました。


「ところで、ぼくは11さいだけど、イチョウはいくつ?」

「15さいです。らすために必須ひっす情報じょうほうですか?」

 どうやら、となりのくにとアサダたちのまちでは、いろいろとちがうところがあるようです。

 ふたりは、まだあくしゅをしていました。いつまでつづけるかをらないからです。

「まわりがえにくくなるのに、どうやってきたの?」

えなくても方角ほうがく方法ほうほうがあります」

 イチョウとすこしはなしたアサダは、まちそとました。いまもっているひとたちがいることをおもいだしたのでしょう。

 たたかいにならないことをつたえて、まちはにぎやかになりました。


 ちゃいろい建物たてもののなかに、おおごえがひびきました。

「アサダ! そいつからはなれろ」

 ながいかみをふりみだして、ぷんぷんとおこっているのはネズコです。

「しずかにしたほうがいい、でしょ」

 しんぱいそうにつめていたミズキが、アサダにちかづいてをにぎりました。

「どういうこと? 手短てみじかにおねがいしますわ」

 せつめいするようにたのんだメルサワは、むすんだかみをゆらさずにおちついていました。

 こまったようなかおで、アサダがいます。

ふね情報じょうほうりたいだけで、使つかはないよ」

 イチョウがほほえみました。

わたしくにではうしなわれた、ほんという技術ぎじゅつ交換こうかんしましょう」

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へいわなせかい 多田七究 @tada79

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