うかぶふね

 うかぶふね


 まちそとには、かわながれていました。

 すこしとおくて、わたりかたをらないので、まちからちかづくひとはいません。

 さきがとがったかたちのおおきなものが、みずのうえをすすんできました。

 よこからると、いえよりもながはこのようです。

 ながいほうをきしにぴったりとくっつけたあと、いたをのばしてはしにしました。

 なにかが、ぞろぞろとでてきました。ずきんのうえからゴーグルをつけて、かおのみえないひとたちです。

 まちへちかづいていることを、まちのひとたちはまだりません。


 かわをわたってきたものは、ふねでした。

 ぜんぶのほんんだアサダでも、ふねりません。

「たいりょうだ。たいりょう!」

 ネズコにをひかれて、おとこ図書館としょかんからでました。

 まちのちかくまでやってきたひとたちのなかで、ひとりがずきんをぬぎました。

 ゴーグルをはずして、アサダよりあたまひとつぶんいじょうのたかいおんながくちをひらきます。

めこむまえには相手あいてつたえるのがルールらしいです」

 まちにいるかずとおなじくらいのひとたちがめてきたことを、まちのぜんいんがりました。


 そして、まちのひとたちはいつもどおりにすごしました。

 りんごをそだてるひとも、ふくをつくるひとも、ふだんとわりません。

 おおぜいめてきたのに、みんなおちついています。

「どうすればいいかな?」

「わたくしをつかまないでほしいわ。アサダがいるじゃないの」

 ことばとはちがって、メルサワはうれしそうなかおです。ミズキのほおがゆるみました。

 さわいだのは三人さんにんだけでした。

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