へいわなせかい

多田七究

アサダとネズコ

 アサダとネズコ


 あさになりました。

 たいようのひかりにてらされて、たくさんの屋根やねがみえます。

 あっちでもこっちでも、いえからひとがでてきました。でも、つめたいかぜがふいているのに、あたたかそうなふくをきていません。

 みちにはくるまがはしっていません。みんなげんきです。


 おとこみちをあるいています。こどもたちは、あつまっていません。

 なぜなら、おぼえるひつようがないからです。

 人間にんげんそっくりにみえるひとたちは、じつは、ちいさな部品ぶひんがあつまっているロボットなのです。

 ノートにくようにぜんぶ記録きろくできます。なおさなければ、まちがうことはありません。

 ここは、人間にんげんそっくりのロボットたちがくらすまちのようです。


 建物たてもののまえで、おとこがとまりました。

 にかいもあって、ちゃいろくて、ふるそうなかべです。おとこは、おもそうなドアをかるがるとあけて、なかにはいっていきます。

 くらいへやで、たながふれました。

 ほんをひらいてみはじめたのは、10さいくらいのおとこです。

 そのとき、まぶしいひかりがひろがりました。

わるくなるぞ。アサダ」

 かみのながいおんながちかづいてきます。どうやら、照明しょうめいをつけてくれたようです。

「ならないよ」

 アサダは、やさしい言葉ことばをかえしませんでした。

「えー? ほんいてあったのに」

くらいとものちかづくことがおおいからだろうね」

「どういうこと?」

「ちかくでものつづけると、筋肉きんにくがかたまってとおくがえにくくなる」

 筋肉きんにくでピントをあわせているのは、人間にんげんもふくめたどうぶつたちのはなしです。

「しんぱいしたんだから、あたしに、ありがとうくらいってもいいんじゃない?」

「ネズコは、まるで人間にんげんみたいだなあ」

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