行逢神と対峙する、少年少女の青春バディ

スヤスヤの長い睡眠から覚めると青空であった。

突然の大音声。天井にぽっかりと開いた穴。そして、自分の頭の中で響く女の子の声……。
主人公がなぜかその体内に「女の子の幽霊」とおぼしきものを宿してしまうところから、物語が始まります。
一体何が起こったのか、主人公はもちろん、「女の子」すらもわかっていない。
いきなり、二人で大混乱です。

キャラクターの「二面性」がすさまじいです。
登場人物の「普段の明るい姿」と「隠している暗い気持ち」の対比がとても鮮やかです。なるほどこの子ならこんな風に考えるだろうな、こんな風に悩んでしまうんだろうな、とキャラクターがすんなり頭の中に入ってきます。
ヒロインたちが心を閉ざし、闇に囚われてしまう理由が納得できるものとなっているので、キャラクターに対してヘイト感情が湧くことがありません。
記号的なキャラクターではなく、きちんと「生きた人間」が描かれていて、そのキャラクター造形は教科書にしたくなります。

あちらこちらにちりばめられた意味深な言葉遊びや、主人公が必殺技を放つ時の「祝詞」など、言葉選びの一つ一つが非常にカッコいい。
普段の地の文は簡潔に、決めるところだけバシッと決める、メリハリがたまらないです。

主人公に取り付いた女の子は一体何者なのか?
主人公を取り巻く怪異は一体何なのか?
読むたびに少しずつ解けていく謎が気持ちいい作品です。

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