かたや、凛と国を背負って立つ英雄。
かたや、フードで顔を隠しておろおろ歩く作家。
ずっと前に関係を断っていた双子の姉妹は、「人間と魔族の最終決戦」という情勢から再び相まみえることになる。
そんなところから始まる物語です。
主人公で双子の妹のトウカは、過去の出来事から自信を失い、不安げにしています。
姉のオウカは王国最強と謳われ、その名誉に恥じないように気高く振る舞っています。
姉妹の再会は決して明るいものではなく、オウカはトウカに憎しみをぶつけ、トウカは怯えて惑います。
二人がなぜすれ違ってしまったのか、そして今もすれ違い続けているのかの描写が巧妙です。
魔族との戦いの行方というマクロな舞台と、姉妹のすれ違いというミクロな舞台が絡み合い、ストーリーがどんどん先に進んでいきます。
その展開は軽快で、一切飽きさせません。
一つのピンチを乗り越えたら、また次のピンチがやってくる。
ハラハラの連続です。
トウカは序盤ではどちらかというとオドオドした場面が目立ちますが、少しずつ勇気を発揮していきます。
そして、とあるもののために強くあろうという気持ちが湧いたとき、誰にも負けない芯の強さを見せてくれます。
その時に得られるカタルシスはたまりません。
ネタバレになるので詳しくは言えないけれど……トウカが本来の輝きを取り戻すシーンをぜひその胸に刻み込んでほしい!
主要登場人物の多くが女性でありながら、アツくなれる作品です。
熱い物語は男性キャラをイメージしがちかもしれませんが、女性キャラにだって紡ぐことができる。
当たり前のことではありますが、そんなことを教えてくれる作品です。
一部まで読みました。
とにかく主役二人がよく書けていて、確執の背景とそこから至った経緯が面白く、うまいです。次章以降につながるキャラクターとの出会いも自然で、しかも配役的な類型があまり思いつかなかったので新鮮でした。
ハイファンタジーは舞台の説明で個性を出すことは少なく、どちらかというと勢いと軽快さで盛り上げるものが多いと思うのですが、この作品はそうした要素に緻密な構成と硬質な筆致が加わり、読みごたえがありました。
続きも気になりますが、他のジャンルも読んでみたいです。作者の職人肌的な感性は、いろいろな方向性へ開花する可能性を感じました。
2部まで読了しました。
高い水準でまとまったハイファンタジーという印象でした。
魔王討伐戦といういきなりクライマックス感の漂う序盤から始まり、姉妹の確執を乗り越えて、魔王の娘マリーを共に育てていくという1部は中々に面白い構成だったと思います。
他の方も述べているようにバトルシーンや展開に熱いものが多く、それが泥臭さというよりキャラや技、描写の巧さもあって『華やかさ』を感じる熱さといった感じです。
そして愛情や友情、絆といったテーマがブレることなく、一貫した物語として成立しているので、雑音を感じることなく読み進めることができました。
何よりこれは魔王の娘マリーの成長物語というだけでなく、マリーを中心とした周囲の人々、それぞれのキャラの成長譚でもあるのではないかなと、個人的にはそこも魅力に感じました。
優しさと激しさ。相反するような様々な要素が、上手く噛み合っている良作でした。
「誰かに校閲・しっかりとした感想をもらいたい人向けコンテスト」用のレビュとなります。
非常に読みやすく、情報も整理されていて頭にすっと入ってきます。
また序盤は物語の牽引力が非常に強い。序章としては大成功ではないでしょうか。
人の深い部分の描写も出来ています。
難をいえば(ほとんど難癖レベルですが)売れ線ではないところでしょうか。
物語を書く能力は非常に高いのですが、市場がない。
小説賞高次予選レベルの作品ですが、編集視点ではそこで大きく減点されそうです。
自分の小説を貫くのであれば、十分面白いので無理に変える必要はないでしょう。
小説を自分の手から離し、多くの読者に委ねたいのであれば(作家としてデビューするなら)、市場の分析をし、売れ筋というものをフィードバックするべきでしょう。
その場合、大衆迎合という苦渋を飲む必要がありますが……。
この話だと、暗殺教室の見せ方が参考になりますかねぇ?
ちょっと、小説のレベルが高くて確度の高い指摘が出来そうにありません。申し訳ない……。
非常に良い作品でした。
ありがとうございました。
魔王討伐の手柄を立てた英雄の姉妹は、ひょんなことから、「魔王の娘」を育てることになった――。二人の姉妹(人間)と、魔王の娘(魔族)の行く末を描く長編ファンタジー小説。
描写やストーリー運びが素晴らしく達者です。すごく小説を書くのがうまいのです。快適な読書ライフを送れます。小説の書き方は、プロ級。自信を持って薦められる作品です。
主人公の姉妹も、対照的なキャラクターで、読んでいて楽しいです。魔族の協力もあり、周囲に隠しながら、どう「魔王の娘」を育ててゆくのか。ファンタジー世界での日常の暮らしの楽しさもあり、また、戦いの楽しさもある、オールラウンドに楽しいファンタジー小説です。