抜錨

 クズがたまたま教師をしていたせいで、一人の少年の人生が大きく打撃を受けた。ああしたクズは徹底的に糾弾してさっさと社会から退場させねばならない。
 重要なことはもう一つあって、打撃を受けた少年の精神を回復させねばならない。こちらも非常に困難だった。極めて幸運にも、良き仲間に恵まれているようでほっとしてはいる。
 本作は『正義』を根幹としつつも、既述した二点から伸びた枝が青々と葉が伸びている。
 少し違う例え方をすると、『正義』という確固たる柱にクズ自身とクズのせいで現れた二匹の蛇が絡みつき毒を滴らせ続けている。
 エピソードとしては痴情のもつれが目立つが、個人的には副部長が一番気に入った。どことなく、京極夏彦先生の京極堂シリーズに出てくる木場を彷彿とさせる。木場のように乱暴な人間では一切ないのだけれど。
 青臭くはあるが、清々しくもある良作だった。 

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