一本、筋が通っているからこそ、歴史である

 数世代にわたる壮大なスケール、銀河の歴史を綴る一大大河ドラマと、この物語を飾る言葉はいくらでも浮かぶのですが、それはこの物語が一本、筋を通しているからだと感じました。

 大河は途中で堰き止められていたのでは成り立たないし、歴史とは連続した大きな流れであるのだから、細くなって支流に分かれてしまうのでもダメですから。

 その大きな筋に、私は題名にある「絆」を感じました。

 作中、記憶や意識を共有するテクノロジーが出て来ますが、それに対する選択、懐く感情の機微に、作中に登場する人物が生きている気配があるように思いました。個々人の問題になりかねない要素を、これでもかと掘り下げ、ストーリーの根幹、歴史や世界に至る程、掘り下げた点に、この物語が嘗て流行ったセカイ系とは一線を画している、骨太な世界にしている骨子なのだ、と。

 未来の世界を思わせる技術、政治と、今も変わらない人間らしい悩みなどの感情の動きの繋がりを感じ取れる物語…希有なSF作品です。

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