決して死ねない呪い、それは一つの(傍迷惑な?)愛の証。

 お姫様に恋した「時紡ぎ」の何やら悲しいおとぎ話から物語は始まります。

 亜麻色の長い髪を三つ編みにしたシェスティンは、「竜の鱗を持ち帰った者には金貨五十枚を与える」という触書きを確認し、自分が持ち帰るのだと衛兵たちに宣言します。
 何やら事情のありそうな彼女、途中でウシガエルを食料替わりに拾うのですが、そのウシガエルが目にしたのは、突然落とされた、シェスティンの首で——⁉️

 衝撃のシーンから始まりますが、彼女は死ねない呪いにかかっているのでご安心を(?)

 彼女の知己である過激なスキンシップを図る竜に、不思議な黒猫、やたらとお人好しな薬師に腕の立つ傭兵、さらには人魚、そして物語の核となる「時紡ぎ」。

 これでもかと詰め込まれたファンタジーだけれど、誰もが少し不器用で優しくて、好きにならずにはいられない魅力的な登場人物&人外たち。

 そして何より、男性のような話し方にすげない態度なのに潔くてカッコイイ、おまけにどこか憎めなく、誰もが惹かれていくシェスティンの呪いの真実を知った時、あまりに切なく残酷な運命に思わず息を呑んでしまいます。

 物語が進むにつれて少しずつシェスティン自身や、彼女に関わる者たちの事情が明らかになり、やがて全てが一つの結末へとつながっていくその物語のうねりに、ページを繰る手が止まらず終盤は一気読みしてしまいました。

 シェスティンとその連れの黒猫は呪いを解けるのか、そしてやたらとお人好しな薬師とのややこしい関係の行方は——?

 時に残酷で、でも根底には確かに大切な人への優しさや愛に満ちた物語。
 ぜひこの世界にどっぷりひたってほしい一作です。

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