糸の一本一本まで美しい……精巧に織り込まれた物語

第一章の時点で惚れ込みました。
冒頭からラストまで、常に光り続ける数々の魅力。単体でも輝いているそれらが密接に絡み合って描き出されたストーリーは本当に、言葉では表せない程に素晴らしかったです。

不死者である女主人公シェスティンは、自身の持つ事情ゆえに、特定の場所に留まらず、他者との関係も作らずに生きていた。しかし、ひょんなことから呪われた黒猫と出会い、その呪いを解くために一緒に旅をすることになる。その過程で様々な謎が明らかになり、全てが絡み合いながら物語は進んでいく……。

シェスティンはもちろん、彼女と関わりを持つ全ての人物が素敵で、全員好きになっちゃいました。張り巡らされた細やかな伏線とその回収にも驚きと興奮の連続でした。
道具や食事等の描写。竜が飛び上がる時の予備動作というような、つい見落としてしまいそうな部分の描写。そういったものを大事にした丁寧な文章は、生活感やその土地の文化、躍動感といったものを読者に肌で感じさせ、物語の内側へと引き込んでくれました。

そういったいくつもの魅力を持つ本作ですが、その中で最も私が惚れ込んだのは、心に関わる描写の美しさです。人物達の動作であったり、台詞であったり、そういった部分から心情や心の距離感が自然と、しかも鮮明に読者に伝わってくるのです。人物達の葛藤や心の交流に触れ、こちらまで胸がいっぱいになりました。

心の描写に限らず、本当に細部まで美しい物語です。選び抜かれた言葉で紡がれる物語は、全編を通して、心に残るシーン・地の文・台詞で満ち溢れていました。

このような小説を書けるなんて本当にすごいです! 出会えたこと、読めたことに心から感謝しております。ありがとうございました。
もっともっとたくさんの方に読んでいただきたい作品です!

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