生と死、御伽噺と現実、呪われ幸運体質の黒猫。相反するものが絡み合う物語
- ★★★ Excellent!!!
これは本棚にいつもあって欲しい物語。分厚いしっかりとした装丁で。そんな本格的なファンタジーです。
不老不死の主人公シェスティンはその運命を抱え、孤独な放浪の旅を続けていました。
彼女は自分に付与されている呪いのようなもののせいで、人と深く関われない寂しさの中にいて、けれどそれを利用するしたたかさもあり、弱いけど強い、強いけど弱いという特別な魅力を持っています。
そんな彼女が、出会ったのは黒猫。近くにある呪いをどんどん身にまとっていくけど、何故だかそれ以外は幸運体質。時間に余裕のあるシェスティンは、暇つぶしがごとく黒猫のまとう呪いを解く手伝いをする事にし、もう伝説になりかけているような消えゆく素材集めを始める事になります。
おせっかいな傭兵、気のいい薬師との出会いなど、黒猫と出会ってからはシェスティンの周囲は賑やかに。けれど同時に、人と深く関わってはいけない枷が彼女を苦しめて行きます…。
物語は御伽噺の真実にも迫って行きますが、その伏線の回収に読む手が止まらなく。時間を忘れて読みふけったのはいつぶりだろうかと。
一章を読み終える頃には、最高のラストを見届けずにはいられなくなること請け合い。恋愛ものとしても読みごたえがあります。
埋もれた名作が多いと言われるカクヨムで、この作品は間違いなくその一つ。お薦めです!