正統派ファンタジーでとても面白かったです!
主人公のシェスティンはその身に不老不死の呪いを受けています。ただ死なないだけではなく、彼女の呪いは他者を害するもの。それゆえにシェスティンは誰とも深く関わろうとせず孤独に生きてきました。
むかしむかしで始まるおとぎ話をベースにしたお話は絵本の1ページを連想させますが、内容は硬派なファンタジー。シェスが背負わされた運命は過酷で、心優しい彼女が人を避けて生きるのも納得してしまうほどです。
それでも主人公のシェスをはじめとした登場人物誰もが魅力的で、彼女の運命を見届けたくなるのがページを繰ってしまう理由でしょう。
何より主人公でありヒロインのシェスティンがかっこよく、読者の誰もが彼女に惹かれてやまないはず。心身ともに強くて賢く、他者を思いやる優しさも持った彼女ですが、時折見せる寂しい顔に読者もギュッと心を掴まれてしまいます。
中盤までは黒猫スヴァットの呪いを解く為の冒険譚の要素が強いですが、後半からはシェスの呪いに関する謎が一気に解明していき、読む手が止まりません。
おとぎ話はめでたしめでたしの大団円の結末を迎えられるのか。ぜひ彼女の紡ぐ時を一緒に見届けてほしいと思います。
これは本棚にいつもあって欲しい物語。分厚いしっかりとした装丁で。そんな本格的なファンタジーです。
不老不死の主人公シェスティンはその運命を抱え、孤独な放浪の旅を続けていました。
彼女は自分に付与されている呪いのようなもののせいで、人と深く関われない寂しさの中にいて、けれどそれを利用するしたたかさもあり、弱いけど強い、強いけど弱いという特別な魅力を持っています。
そんな彼女が、出会ったのは黒猫。近くにある呪いをどんどん身にまとっていくけど、何故だかそれ以外は幸運体質。時間に余裕のあるシェスティンは、暇つぶしがごとく黒猫のまとう呪いを解く手伝いをする事にし、もう伝説になりかけているような消えゆく素材集めを始める事になります。
おせっかいな傭兵、気のいい薬師との出会いなど、黒猫と出会ってからはシェスティンの周囲は賑やかに。けれど同時に、人と深く関わってはいけない枷が彼女を苦しめて行きます…。
物語は御伽噺の真実にも迫って行きますが、その伏線の回収に読む手が止まらなく。時間を忘れて読みふけったのはいつぶりだろうかと。
一章を読み終える頃には、最高のラストを見届けずにはいられなくなること請け合い。恋愛ものとしても読みごたえがあります。
埋もれた名作が多いと言われるカクヨムで、この作品は間違いなくその一つ。お薦めです!
ある出来事をきっかけに死なない身体を与えられた女性、シェスティン。その力はどんな傷を受けても直ちに再生し、また彼女に触れる者を死なせるというもの。その力ゆえ、シェスティンは他者と親しい関係を築くことができず、孤独な放浪の旅を続けていた。
そんなシェスティンが旅の中で一匹の黒猫に出会う。黒猫は本来は人間であったが、呪いにかけられ猫に変えられているという話であった。シェスティンは彼をスヴァットと名づけて旅の相棒とし、呪いを解くためのアイテムを探して各地を巡るが、そこで少しずつ自身にまつわる謎が明らかになっていく。
永遠の生を与えられながらも、その力ゆえに他者との交わりを許されず、一人きりで生きるしかないシェスティン。彼女が孤独を滲ませる場面もあるものの、基本的には笑顔を見せつつ明るく振る舞っています。黒猫のスヴァットも呪いを受けてはいるものの猫の生活を満喫している様子もあり、可愛らしく鳴いてはシェスティンや読者を和ませてくれます。そうした人物像が設定の重さを感じさせず、作品の雰囲気を明るくしていると思いました。
冒頭にある「時紡ぎ」の昔話、シェスティンの力が発動する時に聞こえる謎の「声」、そうした意味深な描写の真相は終盤で明らかにされます。全てがつながった時にはいろいろなことが腑に落ち、緻密に構成された物語に唸り声を上げたくなるでしょう。
スヴァットの呪いは解けるのか、孤独を抱えたシェスティンの旅路の行方は。登場人物の行く末をじっくりと見守りたくなる物語です。
お姫様に恋した「時紡ぎ」の何やら悲しいおとぎ話から物語は始まります。
亜麻色の長い髪を三つ編みにしたシェスティンは、「竜の鱗を持ち帰った者には金貨五十枚を与える」という触書きを確認し、自分が持ち帰るのだと衛兵たちに宣言します。
何やら事情のありそうな彼女、途中でウシガエルを食料替わりに拾うのですが、そのウシガエルが目にしたのは、突然落とされた、シェスティンの首で——⁉️
衝撃のシーンから始まりますが、彼女は死ねない呪いにかかっているのでご安心を(?)
彼女の知己である過激なスキンシップを図る竜に、不思議な黒猫、やたらとお人好しな薬師に腕の立つ傭兵、さらには人魚、そして物語の核となる「時紡ぎ」。
これでもかと詰め込まれたファンタジーだけれど、誰もが少し不器用で優しくて、好きにならずにはいられない魅力的な登場人物&人外たち。
そして何より、男性のような話し方にすげない態度なのに潔くてカッコイイ、おまけにどこか憎めなく、誰もが惹かれていくシェスティンの呪いの真実を知った時、あまりに切なく残酷な運命に思わず息を呑んでしまいます。
物語が進むにつれて少しずつシェスティン自身や、彼女に関わる者たちの事情が明らかになり、やがて全てが一つの結末へとつながっていくその物語のうねりに、ページを繰る手が止まらず終盤は一気読みしてしまいました。
シェスティンとその連れの黒猫は呪いを解けるのか、そしてやたらとお人好しな薬師とのややこしい関係の行方は——?
時に残酷で、でも根底には確かに大切な人への優しさや愛に満ちた物語。
ぜひこの世界にどっぷりひたってほしい一作です。
第一章の時点で惚れ込みました。
冒頭からラストまで、常に光り続ける数々の魅力。単体でも輝いているそれらが密接に絡み合って描き出されたストーリーは本当に、言葉では表せない程に素晴らしかったです。
不死者である女主人公シェスティンは、自身の持つ事情ゆえに、特定の場所に留まらず、他者との関係も作らずに生きていた。しかし、ひょんなことから呪われた黒猫と出会い、その呪いを解くために一緒に旅をすることになる。その過程で様々な謎が明らかになり、全てが絡み合いながら物語は進んでいく……。
シェスティンはもちろん、彼女と関わりを持つ全ての人物が素敵で、全員好きになっちゃいました。張り巡らされた細やかな伏線とその回収にも驚きと興奮の連続でした。
道具や食事等の描写。竜が飛び上がる時の予備動作というような、つい見落としてしまいそうな部分の描写。そういったものを大事にした丁寧な文章は、生活感やその土地の文化、躍動感といったものを読者に肌で感じさせ、物語の内側へと引き込んでくれました。
そういったいくつもの魅力を持つ本作ですが、その中で最も私が惚れ込んだのは、心に関わる描写の美しさです。人物達の動作であったり、台詞であったり、そういった部分から心情や心の距離感が自然と、しかも鮮明に読者に伝わってくるのです。人物達の葛藤や心の交流に触れ、こちらまで胸がいっぱいになりました。
心の描写に限らず、本当に細部まで美しい物語です。選び抜かれた言葉で紡がれる物語は、全編を通して、心に残るシーン・地の文・台詞で満ち溢れていました。
このような小説を書けるなんて本当にすごいです! 出会えたこと、読めたことに心から感謝しております。ありがとうございました。
もっともっとたくさんの方に読んでいただきたい作品です!
ああ、めちゃめちゃ面白かった!!!率直にその一言に尽きます。軽めのレビュータイトルにしましたが、読み応えはものすごいです。お楽しみに!
死なない体を持つため、一処には留まることができない女性シェスティン。見つけたウシガエルを非常食にしようとほくほくしていると、なぜかウシガエルが可愛い黒猫に変化して……!?
……という出会いから始まる、黒猫スヴァットにかけられた様々な呪いを解くために一緒に旅をはじめる物語。
そうは言いつつ「死なない体を持っている」というところにも当然ミソがあるわけです。この謎が少しずつ解き明かされていく展開がほんっとうに面白い!読み始めると止まらなくなるので、ある程度はまとめて読める時に読むのがおすすめかも。
シェスティンはすごく格好いい女性で、でも弱さが見えることもあって。一度読んだらシェスティンと可愛い相棒スヴァットの虜になるの間違いなしです。
恋愛要素は薄めですが、彼女を取り巻く男性陣もみんな魅力的で誰を推すか迷っちゃう。何なら読み終わった今でも迷ってる。彼らを目当てに読んでもいいと思います。でも一番格好いいのはシェスティンです(笑)
プロローグで語られるおとぎ話の本当の結末とは。ぜひ最後まで読んで見届けてほしい作品です。
昔むかし、この世の時を紡ぐ『時つむぎ』が、ある国のお姫様に恋をしました。ーーひとつの物語の異なる結末が、複数伝えられる世界。
「死なない体」を持つシェスティンは、ある特殊な事情から、ひとところに留まらない暮らしを送っていた。高値で取り引きされる「竜の鱗」を求め、彼女は「非常用食料」のウシガエルとともに出掛けたが、カエルには呪いがかかっていた。
おとぎ話風に始まる物語です。呪われたカエル、竜、黒猫、人魚、妖精……と、登場する人物(?)やアイテムにも雰囲気がありますが、どうして、丁寧に創りこまれた異世界ファンタジーです。
戦う主人公のシャスティンが魅力的です。傭兵、黒猫スヴァット、竜ラヴロ、薬師トーレと、他の登場人物も個性的で、シャスティンをめぐる彼らの遣り取りが楽しかったです。
呪いをひとつひとつ解いていく過程で、シャスティンの閉ざされた心が解けていくさまは、爽快でした。
竜、黒猫などの人外キャラ好きな方に、お薦めします(犬派の私が転向しかけたほど、黒猫ちゃんが可愛かったのですが。ラヴロが人化した途端、ころっとそちらに傾いたのは、内緒です……)。