失われなかった希望と共に

 当たり前に存在していると僕らが思っているこの世界。しかし、そんな世界にも、沢山の命の繋がりがあって、自然は命の連鎖で美しく輝いている。

 生物はただ「生きている」のではなくて、そこには豊かな「生活」があるんだ。だから、どんな「生」にも、世界にとっては果てしなく大きな価値がある。

 そんな美しさをまとった世界が突如として消え去ろうとしたとき、「生」を守れるだけの強さを失わずにいられるだろうか。小さくとも希望をしっかり胸に抱きながら、命のささやきに耳を傾け、微かに残る生活の光を絶やさないように、ただひたむきに世界と向き合うことができるだろうか。

 箱庭の中には、未来に託された沢山の想いが詰まっていた。
――失われなかった希望と共に。


 まるで童話のような語り口で描かれる小さな生き物の世界から、終盤にかけて急展開するその物語構成は、読み手の心を奪わずにはいられません。二万文字ちょっとの短編であるにも関わらず、そこに込められたメッセージ性の強さは計り知れないものがあります。世界はただ存在しているだけではなく、それは常に、そして既に物語が始まる場所なのかもしれません。

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