希望と光の庭にも冬が来る。それでも、命はいつか。

 序盤は童話的なのどかで牧歌的な作品、と思いながら読み進めていくが、冬になって見事に小説となる希有な作品。
 この作品の前半部分は、ある庭を構成し、守っていく生き物たちの物語。そして春、夏、秋に、それぞれ象徴的な小動物たちが登場し、人生にとって大切な物を心に残してくれる。例えば、「自分の役割は自分で考えることの重要性」や、または「自分の信じた道は開ける」といったテーマは作品に通底しているだろう。この優しく、皆が協力して、希望と光が溢れる庭がずっと続いていくと思った。しかし、冬になり、この庭の正体を知る時、読者はこれが童話ではなく、小説だったと気付かされるのである。
 文章がとにかく秀逸で、まさにプロ級に美しい日本語でつづられる作者様の作品は、どの読者の心に刺さるはずです。
 是非、ご一読ください。

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