削り出しのモラトリアム

※二話目までを読んだ感想です。
※重大なネタバレはありません。

意味を掴もうと思うそばからこぼれていくような女子高生二人の掛け合い。学校の屋上で喫煙とは穏やかではないが、当人たちにはこれっぽっちも悪びれた様子も深刻に捉える様子もない。退学処分すら、主人公の視点からはサッカーの試合で退場処分になるくらいのノリで語られる。何もかもがとりとめもなく刹那的だけれども、衝動的と言うよりはむしろ惰性的で、時折ランダムというかきまぐれに針が振れる。だから、海へ行くこと一つをとっても、計画性を持って決められないどころか、気が向いて思い立ったときに行く海にこそ漠然と価値があるような、そういう空気が漂う。
モラトリアムのただ中にあると、全ての価値観がなべて、ナンセンスと横一列になる。この作品の少なくとも序盤は、そうしたナンセンスの極致を丁寧に拾い上げて記されたものだ。三歩進んで二歩下がればそれでもやはり前進だが、彼女たちの足取りはそもそも前を向いていない。だから、海へたどり着くかどうかさえもひどく心許なく感じられる。大昔の日本の旅人は(例外はもちろんあったろうが)目的地へと急ぐのではなく、むしろ道中を楽しんだとも言われる。本作は、そうした心構えを思い起こさせてくれる。
気長に、彼女たちが海へと向かうもしくは向かわない様子を楽しみたいと思う。

その他のおすすめレビュー

フサフサさんの他のおすすめレビュー49