このスパイラル感

「彼女が本格的にヘッドホンリスニングを始めよう」という前提の時点で噛み合ってなくて笑いました。トリップしている様子がスノーボードに喩えられているところとか(特にバッドトリップへの入り口の描写がとても分かりやすかった)、バッハを聴きながら「知らない50代くらいのおばちゃんの大きくてハリの少ないおっぱいのことを考えて」「無事にうまく波に乗れ」たところとか、薬物の影響に晒された脳内が繊細に描写されていて、迂闊に触れてはいけなそうなすごみが感じられた。そうすると、スパイラルという言葉と、薬物による精神状態の浮沈、対位法のイメージが綺麗にリンクしているように思える。
「涙拭いてあげる♡」辺りでスタンスが逆転してて、最後の彼女のために真剣に考える場面に収斂していくところの体温的・聴覚的な描写が、主人公がとりあえずゾネホンに着地してスパイラルを脱したような、頼りないながらも前向きな結末につながってて良かった。
ボーズやブルートゥースをくさしてるシーンとか、ラリってる女に30万のヘッドホンを語るシーンがとりわけ好きでした。

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