この物語の概要は、タイトルがそのまますべてを言い表しています。
「女の子が」「海に行く」お話なんです。行った、ではなくてこれから行く。
海に行くという行動が物語上で重要な意味を持つのかといえば、きっとそうではないのです。山でもよかったし、映画館でもよかったし、なんだったらお互いの家でもよかったのでしょう。
主役である女の子二人の間にある「何か」を、私たち読者の前に見せてくれるその素材が、たまたま「海に行く」という行動だったのです。
この二人のやりとりの、実に自然なこと。
流れるような会話。ときに戻ったり、全然別の場所へ飛ぶ話題。些細なやりとりの中にある絶妙な距離感。
誤解を恐れずに言えば、「物語を先に進めるための会話」がほとんどなく、「会話の積み重ねが物語になっている」のです。
ジャンルとしてはちょうど、日常系四コマ漫画が近いでしょうか。それぞれの会話や場面のネタは独立しているけれど、時間の流れには連続性があり、その会話があったという前提がずっと先の別の会話で、ふっと活きてくる瞬間がある。
友達同士の会話。お互いにしか通じない身内の話題。共有した時間。それが増えていく姿を見ているのがたまらなく楽しく、かわいらしい。
この二人の関係が、長く続きますようにと、そう思っています。
いつか海へ行く日を楽しみに待っています。
ストレスフルな社会に生き、もはや小生の頭髪も風前の灯火となってしまいましたが、拙者はこの小説を癒しにヘアケアに勤しんでおりますぞwwwww
我にはめずらしくネタバレなど一切しないで、ピザでももしゃりながら、この作品を読むにあたっての小言を並べていきますな。
というのも、自分、この作品の触り方を間違えて社会的に死にかけたからに他なりません。
まず第一に、賢者モードでない方は読むべきではありません! 女性も一発やってから読むべきです。むらむらが収まらなくなり、大変なことになります。
あ〜〜〜〜、読み返したら死んだ。また死んだ〜〜。
第二に、電車の中で読んではいけません。部屋を薄暗くしてパンツを脱いでから読んでください。
堪え難いと感じたら、とりあえず内腿をつねりましょう。冷静になるのです! 決して我慢してはいけません。大変なことになります。
第三に、残機がたくさん必要です。実社会に生き、しっかりと稼いでくると良いでしょう。とにかく心が荒んでいた方が、小説の薬効が高くなります。部屋にはリラックスできるお香やアロマキャンドルをお使いになると良いでしょう。デートドラッグをキメて読んではいけません。大変なことになります。
否応無しに、あらゆる文脈について連想をさせられてしまいます……
これ、ブラジャー透けてませんかな!? そんなことは一切書いてありませんが、そんなふうに妄想してしまったアナタ、ドツボにはまってます。わかります。匂い立つ靴下、まだ暖かなローファー……森さんのパンツ……
ハハ、我輩のような紳士でもこれですからなwwwwwww
さあ、以上の三か条をしっかりと守って、一緒に賢者の道を登っていきやしょう。
※二話目までを読んだ感想です。
※重大なネタバレはありません。
意味を掴もうと思うそばからこぼれていくような女子高生二人の掛け合い。学校の屋上で喫煙とは穏やかではないが、当人たちにはこれっぽっちも悪びれた様子も深刻に捉える様子もない。退学処分すら、主人公の視点からはサッカーの試合で退場処分になるくらいのノリで語られる。何もかもがとりとめもなく刹那的だけれども、衝動的と言うよりはむしろ惰性的で、時折ランダムというかきまぐれに針が振れる。だから、海へ行くこと一つをとっても、計画性を持って決められないどころか、気が向いて思い立ったときに行く海にこそ漠然と価値があるような、そういう空気が漂う。
モラトリアムのただ中にあると、全ての価値観がなべて、ナンセンスと横一列になる。この作品の少なくとも序盤は、そうしたナンセンスの極致を丁寧に拾い上げて記されたものだ。三歩進んで二歩下がればそれでもやはり前進だが、彼女たちの足取りはそもそも前を向いていない。だから、海へたどり着くかどうかさえもひどく心許なく感じられる。大昔の日本の旅人は(例外はもちろんあったろうが)目的地へと急ぐのではなく、むしろ道中を楽しんだとも言われる。本作は、そうした心構えを思い起こさせてくれる。
気長に、彼女たちが海へと向かうもしくは向かわない様子を楽しみたいと思う。
「海行こう」「いいねー」みたいな会話は若い時分にはよくあって、だいたいそういう会話が発生するのは天気のいい日だったりします。
本作「女の子が海に行く話」でもそれは例外でなく、冬の晴れた放課後の屋上から物語は始まります。
ところで皆様は、「海行こう」「いいねー」を実現させたことが何回ありますか?
恥ずかしながら、筆者はあんまりないです。
だって学生時代って基本的に時間なんて無限にあると思っているし、計画を立てるのって結構体力を使うし、何なら別に絶対海じゃないとダメってわけではないのです。
花見でもいいし、クリスマス会でもいい。
何なら山でもスペースワールドでもなんでもいいのです。
結局大事なのはどこに行くかではなく誰と行くかで、だから本作の主人公であるミキちゃんとアサミも、海に行くことについて真剣に考えようとはしません。
でも、学生なんてそんなものでいいし、それがいいのです。
本作では、ミキちゃんとアサミの何気ない会話を骨子として、ゆったりとした流れで時間が進んでいきます。
そこには魔王を倒すとか、世界を救うような目的意識はなにもなくて、ただただ丁寧に二人の関係性が描かれていくのです。
作者の描く女の子は、瑞々しく、どこか儚い印象を与えます。
丁寧で必要十分な文体が出力する女の子たちは、息遣いが聞こえるほどに存在感を持っていて……いや、もうなんか……レビューっぽく喋るのけっこう大変なんでぶっちゃけるんですけど、すごく、すごい可愛いのです。すごいすごーい!
なんというかこう、作者の描くキャラクターからは「銀髪とかオッドアイとかエルフとかそんなんいらんし。十代の女の子ってだけで十分かわいいし」みたいなパワーがあるのです。
ていうか説明が難しいのでもうこんなレビュー読んでないでさっさと本編を読んでほしい。
ビジュアルのケレン味だけに頼らないストロングスタイルカワイイはホント身につまされますので、書き手の方に是非読んでほしいと思います。
レビューもなにも、もう「本編読め」でいいじゃない。
そんなお話。とても好き。まっすぐで、爽やかで、みずみずしい。本当にまっすぐなものだから、レビューであれこれ書くのもなんかもう違う。あっこれ本編読んだ方が早いやつ。読み始めてすぐそうなりました。
内容は、女の子ふたりのお話です。舞台は学校で、屋上で会話してるところから始まります。あとは学校生活とか。平たく言えば青春です。青春なのに暑苦しくなくて、といって斜に構えたようなところもない。自然。ふつう。私もこんなのがよかったです、ってなる感じ。アサミ楽しいなあ。かわいい。主人公のミキの視点で見てるからそう思うけど、でもミキもかわいい。徒然と、でもわりとコミカルな日常をただ切り取って、それだけで女の子がこんなにかわいいのだからずるい。女の子がかわいいのは知ってたはずなのに、「あれっ女の子ってこんなかわいかったっけ?」ってなる。不思議。
あと個人的に、一番好きなところは文章です。シンプルで、テンポが速い。変に捻ったところがないからするする読めて、でも過不足なく情景や心情が想像できる。綺麗。会話のコミカルなところが生きるのも、この文章の巧みさがあってのこと。さらりと気楽に読めちゃうのに、でも「手軽な読み物」みたいに言っちゃうには惜しいと思わせるだけの内容があって、なので普通にもっと読みたいってなる。
面白いです。面白いのでみんな読もう。続き待ってます。