自然体、ゆえに最強

 この物語の概要は、タイトルがそのまますべてを言い表しています。
「女の子が」「海に行く」お話なんです。行った、ではなくてこれから行く。
 海に行くという行動が物語上で重要な意味を持つのかといえば、きっとそうではないのです。山でもよかったし、映画館でもよかったし、なんだったらお互いの家でもよかったのでしょう。
 主役である女の子二人の間にある「何か」を、私たち読者の前に見せてくれるその素材が、たまたま「海に行く」という行動だったのです。

 この二人のやりとりの、実に自然なこと。
 流れるような会話。ときに戻ったり、全然別の場所へ飛ぶ話題。些細なやりとりの中にある絶妙な距離感。
 誤解を恐れずに言えば、「物語を先に進めるための会話」がほとんどなく、「会話の積み重ねが物語になっている」のです。
 ジャンルとしてはちょうど、日常系四コマ漫画が近いでしょうか。それぞれの会話や場面のネタは独立しているけれど、時間の流れには連続性があり、その会話があったという前提がずっと先の別の会話で、ふっと活きてくる瞬間がある。
 友達同士の会話。お互いにしか通じない身内の話題。共有した時間。それが増えていく姿を見ているのがたまらなく楽しく、かわいらしい。

 この二人の関係が、長く続きますようにと、そう思っています。
 いつか海へ行く日を楽しみに待っています。

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女の子が海に行く話

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