★★★ Excellent!!! 滅ぶべくして滅ぶ ト・ヘン・ボク 隕石は災害だが同時に自然現象である。 自然現象に対して一致団結して克服してきたのが人類であったが、悲しいことにこの物語の人類はそれを忘れている。 地球が過去に行ってきた大絶滅という名の自然淘汰が、最後には外からやってきたのである。 レビューいいね! 0 2020年6月17日 01:12
★★★ Excellent!!! 極限状態で明らかになる人間の本質 和田島 イサキ 隕石衝突による地球滅亡まで一年、宇宙脱出のために足掻く人類のお話。 二部構成(幕間除く)のパニック劇です。前半と後半でかなりはっきりとお話が分かれる、その構成が実に特徴的。前半であんなにがっつり主人公していたキャラクターが、いきなりすぱっと退場してしまう。この瞬間の衝撃というか思い切りの良さというか、いきなり突き放されるような感覚がとても好きです。 後半の展開、特に結び付近の流れはもう圧巻でした。 すでに航行中の宇宙船内部、次々語られる権力者たちの醜聞。視点保持者の主観においては「最低に利己的」としか言いようのないそれらに対して、でもその当人もまた同罪である、という現実。呉越同舟、同じ穴の狢であることを知りながら、胸の内で他者を断罪することで自らを〝正しい側〟に置こうとするそのエゴイズム。なにより、そんな人間が個人の価値観で、命の選別を行おうとしている――その権利が自分にあると自然に思いこみつつあることの、まるで背筋が凍りつくようなこの恐怖! エグいです。宇宙船という限定空間における人の正気の脆さ。いち科学者(医療従事者)が己の持つ知識や技術を、なんらかの権威と錯覚してしまう瞬間。個人の中の倫理観が腐っていく様を描いた、非常に痛烈なSFサイコスリラーでした。 レビューいいね! 0 2020年2月15日 21:23
★★ Very Good!! 読みやすく丁寧に調整された文章 佐藤ぶそあ 起こっている事態の規模や、「公正な抽選」のシステム、そして幕間のあとに宇宙船の中で繰り広げられるこれからの話。どれも複雑な事情や機能が絡んでいるはずなのですが、するすると飲み込める明快さがあります。 論理の破綻を避け、身近なアイテムやモチーフを出し、分かりやすい言葉選びを行うという基本を丁寧にこなしているように思います。 そして誤解のしようがない物語であるからこそ、これからの彼らがどうにもなりようがないということが、ずっしりと分かる物語でした。 レビューいいね! 0 2020年1月30日 19:09
★★★ Excellent!!! 箱舟が乗せるものは希望と呼ぶには程遠く―― 神崎 ひなた 人間の愚かさが窮地に陥るほどその本性を現すように、風刺のきいたブラックSF(なのかな?)でした。未来に希望を託すには、人間はあまりに愚かだぁ……。 生々しくて、できれば現実に起きてほしくはない……! レビューいいね! 0 2020年1月4日 20:14