第12話 吸血鬼の少年

 数日後リーと魔王は魔王城に連れ戻されて、地下の部屋に連行された。


 時々地下からの声が聞こえてきて怖い......


「なぁなぁーー」


「怖いなぁ......えっ?」


 声の聞こえた方を見ると、エリーさんより少し背が低く、真紅な目の少年が一人立っていた。


 気配を全く感じなかった......考え事をしたとしても少しの気配も感じないことは今まで無い。


「えっと......どなたです?」


「僕はコール・リンクス。吸血鬼さ!」


「へぇ......そうなんですね」


「あれ? 普通はもっと驚かない? なんで吸血鬼がいるの。みたいな」


「魔王とか勇者とかいるので吸血鬼がいてもおかしくないかと」


「チッ」


 コールは悔しそうに舌打ちをする。


「ちなみに何をしに来たんですか?」


「人間がいるって聞いてさ。ちょっとでいいから血を吸わせて......」


「嫌です」


 即答。いや当たり前でしょ......


「ええぇ〜じゃあ僕は何のためにここまで来たのさ!」


 いや知らんがな。


「用事がないなら仕事があるので出ていってもらってもいいですかね」


「嫌だ嫌だ〜またトマトジュース生活に戻るのなんて嫌だ〜!」


「トマトジュースって......吸血鬼って人間の血ばっかり飲んでるのかと思ってた」


「父上から人間界に行くのは禁止されてたんだもん」


「そうなんだ」


「たまに人間界から動物を狩って、その血を吸う時もあるけどたまだし、そんなに吸えないから......」


 コールは俺の手を握り、


「お願い......吸わせて?」


 目を潤ませ懇願してくる。


「仕方ないなぁ......ちょっとだけだぞ」


「わーい! いただきまーす」


 コールが俺の首を噛み付こうとすると、スパコーンと音がして、コールが倒れる。


「全く、目を離した隙に......」


「あっエリーさん。どうしたんですか?」


 スパコーンとスリッパでコールの頭を叩いたのはエリーさんだった。


「こいつは一応客人だ」


「そうなんですね」


「あとこいつに血を吸わせたらダメだぞ。一旦血を吸い始めたら相手の血を全て無くなるまで吸い尽くすからな」


「えっマジですか......」


 エリーさんが止めてくれて良かった。


「ちぇっ......せっかく久々に血が吸えると思ったのに」


「いいから早く来い。魔王が待ってるから」


「はいはい今行きますよ」


 二人は部屋から出ていった。


「危なかったなぁ......血を吸われてたら多分死んでた。もっと気をつけなきゃ」


と心に固く誓う洸真だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る