第7話 男勇者リーグラウン
「リー今まで何してたの! しかもその格好……」
「えっ? この人がリーグラウン?」
「ちーす! そうっすよ。えっと誰ですかね?」
リーグラウンと呼ばれる金髪の少年だが、服装も髪型もどこからどう見ても田舎のヤンキーにしか見えない。本当に勇者だったのだろうか。
「あっ魔王代理をしている一ノ瀬洸真と言います」
「魔王代理? あぁ~魔王っちがサボってる代わりか~大変だね」
魔王っちって……
「ていうか、なんでリーが魔王と一緒にいるのよ! 討伐しに行ったんでしょ?」
「あぁその事なんだけど~まあ色々あって意気投合してさ。仲良くなった」
「そうなんだよ。彼が私を殺しに来たんだが、その時それどころではなくてね」
「それどころではないと?」
「あぁちょうど競馬の有○記念があってね」
おいこら。
「まさか意気投合ってギャンブルに……」
「いやぁ魔王っちに誘われて行ってみたら、これがまた面白くてね~やめられなくなっちゃった」
やばい……ダメなのが二人に増えてしまった。
「リー正気に戻りなさい。貴方は魔王を倒せる数少ない存在なのよ! そしてその中で一番強い貴方が魔王を討伐しなかったら誰が魔王を倒すのよ」
「いやぁそうは言われてもさ~実際会って意気投合してわかったけど、特に害はないし別に討伐にこだわる必要はないかなぁって思ってさ」
確かに魔王は何もせずに、ただギャンブルに没頭していて、全くと言っていいほど害はない。というか真面目に仕事してほしい。マジで。
「それだからって……」
アイリスは嘆きの声を上げる。
「村の皆は貴方が魔王を討伐するのを願いながら待っているのよ? どんな面下げて村に帰るのよ」
「あぁ村には当分帰らねーよ」
「えっ?」
「これからまた魔王っちと一緒に人間界に行って、競馬見に行ってくるからさ。あと一年くらいは向こうにいるかな」
「あんたね! いい加減にしなさいよ」
「ちょっいてて、耳を引っ張るのはやめろって」
アイリスの堪忍袋の緒が切れたのか、リーグラウンの右耳を引っ張りながら、玉座の間の外に出ていってしまった。
「あーあ行っちゃった」
「そうだね。まあまたそのうち戻ってくるさ」
「そういえば何をしに魔界に戻ってきたんです? とうとう仕事をやる気になりました?」
「ははは、そんなわけないじゃないか。ただギャンブルに賭けるお金が足りなくてね」
「えっまた何か売るんですか?」
「いやいや。もう売れるものはほとんど売っちゃったからね~」
自覚はあったんかい。
「隠し財産があってね」
魔王が玉座をズラすと、玉座があった場所には下に続く階段があった。
「こんな場所が……」
魔王と一緒に下に降りると、そこには大きな金庫がいくつかあり、魔王は金庫の鍵を開けて中から一万円の束をいくつか取り出す。
「よしこれでまたギャンブルが出来る」
「もうそろそろやめたらどうです?」
「いや無理だな。あれほど面白いものに出会ったのは初めてだったのだ」
魔王は目を輝かせながら答える。
もうダメだギャンブル依存症になっちゃってるよ……
「一ノ瀬君も行ってみないかい?」
「えっ? いや俺未成年ですから」
「バレなきゃ大丈夫だって」
「いやいやいや。ダメですって」
そんな話しをしていると、後ろから凄い殺気がして、振り返ってみるとそこには秘書エリーの姿があった。
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