第8話 魔王土下座
「魔王……ようやく見つけた」
かつて無いほどの殺気を帯びた鬼の形相をした秘書エリーが立っていた。
「今までどこへ行っていたんだ?」
「いっいやちょっとギャンブルに……」
「あ?」
エリーは近くにあった玉座を蹴り倒す。
こんなエリーさんがキレたのを見るのは初めてだ。
「仕事をサボってギャンブルだと?」
「はい。すいません」
魔王がエリーさんに頭を下げた。
「でも代理を雇ったから…...」
エリーさんは魔王を睨みつける。
「いえ、なんでもありません」
魔王は蛇に睨まれた蛙のようになった。
「で、またギャンブル行こうと? しかも未成年を連れてか?」
「いえ滅相も無い」
魔王土下座。
「とりあえず今から魔王にはたっぷりと仕事してもらうからな」
「……はい」
魔王はエリーさんに連れられて、玉座の間を出ていってしまった。
「魔王にあんな一面があったとはな」
まあそりゃ仕事サボってギャンブルしていれば頭が上がらないよな。
「あれ? 魔王っちは?」
「あっリーさん。魔王ならエリーさんに連れられてどこかに行きましたよ」
「あちゃー捕まっちゃったのか」
「リーさんはどうしてここに? アイリスさんと一緒じゃなかったんですか?」
「うん説教されたからなんとか抜け出してきた」
おいおい……
「魔王っちと合流してから競馬に行く予定だったんだけど……捕まったなら当分の間は行けなさそうしなぁ」
「先に一人で行っていたらどうです?」
「いやぁ、一人で行ってもなんか盛り上がらないんだよね~」
「はぁ……」
数分悩んでいたリーさんだったが、突然閃いた顔をしてこう言った。
「そうだ洸真っち! 一緒に行こうよ」
「いやだから、俺未成年なんですけど」
てか洸真っちって……
なんでも最後にちを付ければいいと思ってないかこの人……
「大丈夫だってー俺っちも未成年だけどギャンブルしてるから」
「はっはぁ……え?」
リーさんの重大発言に俺は驚く。
「リーさん今何歳なんですか?」
「今年で16かな」
「えっ同い年!?」
「そうみたいっすね」
「もう少し年上に見えた」
「そりゃ、ギャンブルするために少しは工夫してるからね」
「そこまでしてギャンブルをしたいんですか?」
「ギャンブルをしてると、こう胸が熱くなるんだよね。もしかしたら勝てるって思うのか」
この人も魔王と同じく重度のギャンブル好きなんだな。
「リーさんもほどほどにしてくださいね。じゃないと魔王みたいにお金無くなりますよ」
「大丈夫っすよ。まだ魔王討伐用に貰ったお金まだ余ってるし、何回かギャンブル勝ってるから」
おい。クソ人間じゃねーか。
「あと、さんづけとか敬語とかいらないっすよ。同い年なんだし」
「そうです……そうだね」
結局リーは一人で競馬場へ行くことにしたらしく、魔王への伝言を頼まれた。
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