第10話 魔王城のメイド 後編
「あら? お気に召されませんでしたか?」
「あっ、カースさんこの朝食は一体......」
カースさんが昼食のトレーを持って部屋に入ってくる。
「いつもはエリー様がお作りになられているのですが、今日は作れないとのことでしたので、私が代わりに作ったのですが」
「えっこれカースさんが作ったんですか......」
この人がこんな殺戮兵器を作り出したのか。
顔は可愛いのに......
「やはりダメだったでしょうか......」
「えっ?」
「私が前にも魔王様やエリー様にお食事をご用意させて頂いた時に、エリー様から今後作るな、と言われまして」
そりゃそうだ。あんな兵器を何度も作られたら大変だ。
「でも何がダメだったのかわからないんですよ......ちゃんとレシピ通りに作りましたし」
「いや、俺に言われても......」
「私だって努力したんですよ!魔王様からこの城のメイドを任されて、完璧なメイドになるために......だけど......だけど......うぇーん」
彼女は泣き出してしまった。
おいおいマジかよ。いきなり泣き出したぞ......どうすんだよこれ。
「落ち着いてくださいよ。大丈夫ですって魔王も頑張ってるって認めてくれてますよ」
「本当ですか!?」
途端に泣き止んで、目をキラキラさせながら俺の方を見てくる。
「たっ多分」
曖昧な回答をすると、彼女の表情から明るさが消え、
「デスヨネーどうせ私なんて魔王様にも認めて貰えないただの駄メイドですよ」
今度は部屋の隅で蹲り、手で床に小さな丸を書いている。
こいつ......超めんどくせぇ~
そう思いながらもどうにかメイドの機嫌を直し、正常な状態に戻すまでに二時間も費やした。
「すいません。少し取り乱してしまいました」
あれを少しと呼べるのだろうか。
「洸真様? お疲れみたいですが大丈夫ですか?」
誰のせいだと思ってる! と叫びたかったが、平常心を保ち、
「いえ、大丈夫です......」
「そうですか。辛いようでしたら魔法で回復させますので、なんなりとお申し付けください」
はいわかりました。と返事しようとしたが、今の言葉に少し引っ掛かりを感じた。
「えっ? カースさんって魔法を使えるんですか?」
俺からの質問に、彼女は何当たり前のことを言ってるのだろうという顔をして答える。
「そうですよ? 魔界に住む者は皆魔法を使えます。まあ使える魔法はそれぞれですが......」
「......全員」
俺はカースさんの言葉に絶句する。
魔王やエリーさんみたいに魔族の中でも上位に入る人が魔法を使えるのはわかるのだが、まさか魔界に住む全員が魔法を使えると思ってはいなかった。
「では私は仕事に戻りますので」
そう言って彼女は朝食のトレーと昼食のトレーを持って、部屋を後にした。
「魔界って凄いなぁ......」
色々と考えてると腹の虫が鳴く。
そして鳴いて気づく。
「あれ? 俺の昼飯は......?」
エリーさんは作れない。カースさんのを食べたら色々な意味で死ぬ。
俺は昼食抜きを覚悟したのであった。
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