第11話 魔王逃亡

「なぁ、魔王を見なかったか?」


 突然のエリーーさんからの問いかけに、俺は驚きながら答える。


「えっ? エリーさんと一緒じゃなかったんですか?」


「ああ。さっきまで一緒だったんだが、一瞬目を離した隙に逃げられてな。どこに行ったのか探してるところだ」


 魔王はエリーさんに捕まり、強制的に仕事をさせられていた。まぁサボっていた魔王が悪いんだけど。


「魔王が行きそうな所に心当たりはないか?」


「行きそうな所ですか......」


 俺は魔王が行きそうな所を考えてみるが、思い浮かばない。


「すいません......思い浮かばないです」


「いやいいさ。もし見つけたら連絡してくれ」


「わかりました」


 俺は代理の仕事へと戻る。

 魔王が仕事を強制的にさせられていたといっても、今まで貯まった分の仕事を一人で終わらせることが出来るわけもなく、俺も代理として魔王の貯めた仕事をこなしている。


「魔王が何処へ行ったのか......」


 魔王のことを考えながら仕事をしていると、アイリスが入ってきた。


「ねぇ、リーがどこにいるか知らない?」


「いえ知らないですね......どうしてです?」


「説教の最中に逃げ出したのよ。全く何処行ったのかしら」


「あぁ......」


 それなら思い当たる節がある。

 確か競馬場に行くとか言っていたな。


「んっ?何か知ってるの?」


「イヤ、オレハナニモシリマセンヨ」


「どうしてカタコトなの......」


 バレたらマズイ。俺がリーに殺される。


 何故かというと、あの時リーから、


「アイリスには口が裂けてもオレっちの場所を言うなよ? 言ったらどうなるかはわかるよな?」


と言われたのだ。


 流石元勇者なだけオーラは違い、身の危険を感じた俺は、絶対に口外しないと誓った。


 ここでバレるわけにはいかない。


「まあいいわ。もし居場所がわかったら教えてね」


「あっ......はい」


 アイリスはリーを探しに部屋を後にする。


「助かったぁ......」


 簡単に引き下がってくれて助かった。あのまま質問責めを受けていたらボロが出そうだった......


「ふぅ......これで一安心だ。リーが競馬場でギャンブルしてるとか言ったら洒落にならん」


 そこでふと思い出す。


「あれちょっと待てよ.....確か魔王とギャンブルする約束をしていたとか言っていたな。まさか魔王も競馬場に......」


「へぇ魔王は競馬場にいるのか......」


「リー、まさかまた......」


「えっ⁉︎」


 聞き覚えのある声が後ろから聞こえ、振り返ると、そこにはアイリスとエリーさんが立っていた。


「何故ここに⁉︎ 今さっきアイリスは部屋から出ていったはずじゃ」


「ちょっと幻覚魔法をね。あと洸真が何か知ってそうだったからエリーさんに頼んで自白魔法もかけてもらったの」


「ええぇ」


「さてと、場所もわかったし。魔王と男勇者を連れ戻しに行くか」


「そうですね」


 二人は転移魔法を使い、多分競馬場へと向かったのだろう。


「すいません。魔王、リー」


 俺は、二人が居なくなってから、静かに囁くのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る