第5話 女勇者に殺されかける
学校が終わり、コンビニでお菓子を買い終わった俺はいつも通り転移魔法で魔王城へと帰ってきた。
今考えると転移魔法って凄い便利だよな。転移魔法があればバス、電車、新幹線などの交通機関を必要としないため、お金は一切かからずに好きな所に行くことが可能なのである。
そして俺が今付けている小型イヤホンは、エリーさんから頂いたもので、行きたい場所を頭の中で想像してから『転移』と叫ぶと自動的に考えた場所に飛べるという超有能な魔法具の一種だ。
何故イヤホンなのは不思議だが……
ただし欠点もあり、人に見られている所ではどこにも転移することは出来ず、転移するためには裏路地など人通りが少ない所に行って転移しなければならない所だ。
まあそれはどこでも飛べる代償と言ってもいいし、突然目の前にいた人が消えたら……そりゃびっくりするだろうしね。
そして転移した俺は、いつも通り荷物を自室に置き終えて玉座でエリーさんから頼まれた業務をしていた。
ちなみに玉座といっても大きな椅子には俺にはデカすぎるため、隣に椅子と机を置いて業務をしている。
ドーン!!
という何かが破壊された音がしたので顔を上げると、大きな扉があった場所には1人の美少女が突っ立っていた。
そう。ちゃんと出るとかは出て、引っ込むところは引っ込んでいるし、学校にいたらダントツ一位であろうほどの美少女が、そこにいた。
しかし何故か両手には一本の剣が握られている。嫌な予感しかしないのだが……
やはり嫌な予感は的中し、彼女はいきなり俺に斬りかかってくる。
「うお!?」
間一髪で回避に成功したが、俺の大事な黒髪が結構持っていかれた。
俺の大事な髪が……
「危ねーじゃねーか!」
と叫ぶが、俺の声が聞こえないのか再び斬りかかってくるので再び回避した。
「なんで避けるのよ!」
「いや突然斬りかかってきたら誰でも避けるだろ!?」
「早く勇者を返しなさいよ!この魔王め!」
彼女は言いながらどんどん斬りかかってくる。
「ちょ、ちょっと待てよ!勇者って誰のこと?」
「はぁとぼける気?あんたを殺しに勇者が一年前に行ったのに、あれから全然勇者が帰ってくるような気配はないし、勇者が魔王に乗っ取られたって噂を耳にしたからわざわざ駆けつけたんじゃない」
「へぇーそうなんだね」
「だから早く勇者の居場所を吐きなさい魔王、さもなくば殺すわよ」
「あのさ、とっても今言いづらいんだけどさ……」
「何よ、命乞いなら聞かないわよ?」
「俺、魔王じゃなくて魔王代理なんだよね」
「……ふぇ?」
俺は全ての出来事を女勇者に話す。
最初は全く信じようとしなかった女勇者だが、真剣に俺が話しているので、それを聞いてるうちに少しずつ信じてくれているようだった。
「まあそういうわけなんだ」
「へぇ、あなたも大変なのね」
「まあーアルバイトだと思えばまだマシなほうかな、時給高いほうだし」
「あるばいと?それなに?」
アルバイト通じないんかい!
まあ勇者って言ったらバイトなんてしないよな。
「まあ、あなたみたいなひ弱そうで棒切れみたいな人が魔王なわけないもんね、魔王はもっとでっかくてゴツイみたいな人だもん」
酷い言い方だな。そんなにひ弱に見えるのか俺……ちなみに実の魔王はでかくもないしゴツクもない、見た目でいうとメガネかけたサラリーマンみたいな人が魔王だ。
「もしかして魔王とあったことないんですか?」
「あぁ、討伐は俺一人で充分だってリーグラウンが言ってたから」
めっちゃ魔王格下だと思われてんじゃん。
ちなみにリーグラウンとは男勇者の名前らしい。
「まあそんなわけで、貴方が魔王じゃないなら別に殺す必要もないし、私は帰ります」
また来るね、と言い残すと女勇者は玉座の間から立ち去った。
俺は女勇者の後ろ姿を見ながら思う。
「壊した扉直していけよ!!」
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