揺れる心の軌跡をたどって、生き方を見つけよう。

ユキノは高校生の女の子。心配性の母親と、ちょっと影の薄い父親と、中学生の弟がいる。ごく普通の家庭のようだが、ユキノの問題は学校にいけないこと――いわゆる不登校だ。他人の目を気にしつつ、日中は独りで過ごしている。
ある日、ユキノは近所の古いたばこ屋で、奇妙な張り紙をみつけた。下手な日本語と英語で書かれたそれは――

「まじょ はじめました」

 ”We now have a witch!"

――70歳をすぎたお婆ちゃんが、魔女に? 首を傾げるユキノの前に現れた若い男性は、こう名乗った。「ニワトコ=スティーブン。マジョです」
一見日本人な英国人ニワトコ氏と、ユキノと、魔女たちの、友情とごはんと自立の物語。

     ◇

他人への挨拶や接し方、服装や進路、感情の動きの隅々に至るまで、「愛情」という名の「支配」を押し付けてくる母親。それに合わせて生きることに精一杯なユキノちゃんが、可哀想に思えてきます。何とも濃厚で息詰まる母娘関係ではありますが、反抗期っぽい弟タケシ君の言動と、《外》の世界の文化をやんわりとした態度で教えてくれるニワトコ氏が、風を通してくれます。ニワトコ氏のホームステイ屋主キワコさん、現代日本で生活する”魔女”たち、カウンセラーのスズキ先生たちと、お好み焼きやジンジャーエールを作ったり、会合したり、考えを整理したりしているうちに、ユキノちゃんはゆっくり元気になっていきます。

「フツウって何?」「大人になるってどういうこと?」
誰もが成長過程で考えたことがあると思われる問題に、ユキノちゃんは正面から向き合っています。

思春期の自立を迎えた女子の葛藤と、煮詰まった親子の心理、英国ブンカ?に興味のある方にお勧めします。

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