同年代の少年少女に読ませたい

新卒で入った会社が児童書専門の印刷会社で、随分多くの小児向けから中学生までの本の仕事をした。
挿し絵を組み入れてのページ組みでも全文読んで、構成に落ちはないかチェックをするのは大事なことだ。
児童書は図書館や児童館に入るし、課題図書にもなるので版元も超本気、作る側も真剣勝負だった。
自分が子供の頃によく見た表紙の、何世代にもわたって読み継がれた物語もあれば、彗星のごとく現れた新しい才能のユニークな作品もあった。
『ネコばあさんの家に魔女が来た』はそうした凛とした児童文学の風格を感じさせる作品である。

作者の赤坂さんはこれまで大人向けの作品が多かったが、この作品では、双子のように一体化したままいびつに育ってしまった母と娘を描く。
自身がミックスキッズで「淵」「きわ」に立つ、ニワトコさんという魔女(男)の作る食べ物に力を得ながら、一歩ずつ転びつつ歩こうとしている多感な娘・ユキノに、その母親は当然のように手を取って『こっちが安全なんだから、間違いないから』と連れ立って歩こうとする。
子を持つ母にとっては、おのれを振り返り心が痛む描写が続く。
ユキノの母親自身が「こういう母って嫌だなあ」と、少女時代に漠然と思った母親像になってしまっているかもしれない、危うさ。

現役少女も万年少女も、自分の道は一人で工夫して歩いて行かなければならない。
色んな「エッジ」に立っている魔女(男も女も出てくる)、少女、元少女。
様々な立場の人の心に沿う事が出来る清々しくデリケートな本作。
ぜひ是非児童・ジュニア文学関係者に着目して頂きたいし、本になって少年少女の心に入り込んでほしい

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