感覚を奪われた闇の中で主人公の思考が、意識がどう変化するのかは氏の筆致を楽しんでいただくとして。暗黒神話に慣れ親しんでいる読者であれば、すんなり状況が理解できるであろう、舞台装置。掌編、という文字数は短い、というのではない。全ての文字列が狂気を孕んだインパクトを持つならば、それ以上読むのは致死毒でしかない。まぁ、主人公はあっさりと正気を手放してましたが。読者もうっかり追随しかねない。気を付けないと。これは復讐譚でもあり、食屍鬼譚でもある。肉に食らいつく擬音がたまらなく愛おしい。ぞぶり。
暗闇というのは、人が最も恐怖する物と言われています。暗闇に何時間もいると発狂すると言われますし、まさに恐ろしいですね……。 そんな場所に閉じ込められた主人公の悍ましさが、まるで侵食するようにこちらへと伝わってくるよう感じがします。そして最後の衝動は、人だった主人公が暗闇のせいで人外となってしまった……そんな感じを思わせます。 まさに「恐怖」という文字を、具現化していると言っても過言じゃないはず。
どこかに閉じ込められた、主人公の恐怖の体験。暗く不快な所に閉じ込められるという、根源的な恐怖心を刺激する感覚に訴える作品です。
うわあああ、ってなりました。
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