概要
商業デビュー直前のライトノベル作家、片桐右京の前に、完璧なエルフのコスプレをした少女、メサが現れる。
彼女は告げる。
「お願いです。ライトノベルを書くの、やめてください」
理由を尋ねる右京に、メサは答える。
「あなたが書くのをやめないと、世界が滅ぶからです」
成り行きでメサに居座られてしまった右京の日常は、思わぬ方向に転がっていく。
★第二章★
アメリカの大学で日本文学を教えている平沢のもとに、高校時代の友人が行方不明になったと連絡が入る。
その後、不可解な出来事が平沢を襲う。
平沢の危機を救った台湾人の大学生ヤン・リーリンは、この世界にまつわる驚くべき事実を告げるのだった。
★第三章★
メサの兄、カレヴァの作り出した仮想空間に閉じ込められた右京。そこでは異
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- ★★★ Excellent!!!ライトノベルの意義を問うことを通じて想像力の大切さを見つめ直す秀作
物語は、ある小説家の青年の前にエルフの女の子が転がり込んでくる、といういかにもライトノベルにありそうな導入で描かれます。
しかし実はこの「それっぽさ」すらも作品テーマに引き込むための伏線です。
彼女は青年に対して「あなたの執筆するライトノベルが引き金になって、世界から想像力が失われて滅んでしまう」と主張するのです。
その滅びる理由というのが一見荒唐無稽なようで、ロジックとして納得がいくもので感心させられました。また話の流れの中で何度も「ライトノベル」「異世界もの」についての在り方を問いただす場面があり、読んでいて何度も共感し刺激を受けました。
やがて主人公たちはその滅亡をくい止めるため…続きを読む - ★★★ Excellent!!!文学とライトノベルの境界を侵してゆく物語
カクヨムを乱読していると、たまにどうしようもなく惹きつけられる物語に出会います。
作者の個性がクッキリとしていて、それでいて物語として面白く、また一緒に想像し、考えさせるような物語。
これはまさにそんな物語でした。
タイトルにもあるように、ライトノベルそのものが一つのテーマ。
その存在を浮かび上がらせるために文学、ファンタジー、SFといったギミックで話が描かれていきます。
幻想文学の雰囲気もたっぷりあるのですが、ここには確固とした現実感もあるのです。
そういうギミックを使い、変転していく物語を追う中で、ライトノベルというジャンル、それがもたらすものに光が当てられます。
しかも話はそれだけで…続きを読む - ★★★ Excellent!!!想像力のない世界を想像してみてください。
ほぼ1年間、ずっとこの物語を追いかけていて
終わったときには感動よりも「終わってしまうのか」という
残念な気持ちのほうが大きかったかもしれない。
とにかく連載が終わったあと、冒頭から読み返してみた。
1回目に読んだときよりも面白かった。次もそうだろうか。
そういうふうにして、この物語のことを忘れないと思う。
「ライトノベル」を語る
「ライトノベル」の体を取った作品でありながら、
ところどころ「純文学」的な効果も入っていて、
その融合は小説のひとつの到達点で、
またこの作品で描かれた世界の最終形なのかな、ということを
思ったりした。
全ての小説に関わるひとにこの作品を読んでほしい。
想像力…続きを読む - ★★★ Excellent!!!さよなら、ライトノベル
って、読み終わってみて、タイトルと同じ感慨しか浮かびません。このタイトル、秀逸の一言です。これだけだと、ライトノベルを否定した悲観的な言葉かなって思うでしょう? そうじゃないんですよ! ネタバレになってもあれなんで、多くは語れませんが。
これだけ難しい主題に真っ向から取り組んで、かつ魅力いっぱいな登場人物たちを配置しつつ、ぐいぐい引き込まれる物語を紡がれる作者様。やっぱり只者じゃありません。すごい。
「ライトノベル」ってなんだろう? 創作することにどんな意義があるのだろう。容易に答えのない普遍的な主題に挑んだ意欲作です。でも堅苦しくなくストーリーも楽しめます。たくさんの人に読んでもら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ラノベ作家を夢見る主人公をラノベのような現実が襲う!
幻想的な、いや見方によってはちょっとホラーな光景の中、シャツ一枚のコスプレ少女と出会い、思わず自宅マンションに連れ帰ることにした主人公はデビュー目前のラノベ作家。
目撃されいてれば通報間違いなしの事案だが、そんなことを考えるそぶりもなく御都合主義的に受け入れていく主人公は、ラノベ作家の卵というよりは、まさにラノベの主人公そのものだ。おまけに自室に合鍵で出入り自由の幼馴染の女子高生まで登場するのだから、これはもうラノベの王道的出だしとしか言えない。
だがこれは間違いなく作者様の仕込みだろう。
この物語は、ハイファンタジーの課長さん物語に始まり恋愛SFの嘘つき先輩、そしてSF西部劇の少年成長…続きを読む