ライトノベルの意義を問うことを通じて想像力の大切さを見つめ直す秀作

物語は、ある小説家の青年の前にエルフの女の子が転がり込んでくる、といういかにもライトノベルにありそうな導入で描かれます。
しかし実はこの「それっぽさ」すらも作品テーマに引き込むための伏線です。

彼女は青年に対して「あなたの執筆するライトノベルが引き金になって、世界から想像力が失われて滅んでしまう」と主張するのです。

その滅びる理由というのが一見荒唐無稽なようで、ロジックとして納得がいくもので感心させられました。また話の流れの中で何度も「ライトノベル」「異世界もの」についての在り方を問いただす場面があり、読んでいて何度も共感し刺激を受けました。

やがて主人公たちはその滅亡をくい止めるために奔走することになるのですが、その中で「ライトノベル」「小説」といった一見すると内向きとも思える概念が、多くの人間が何らかのイメージを共有したとき集合的な無意識として世界に影響を与えてしまう、という多重構造的な展開になるのですが、それを優れた文章力で読みやすく描写しております。

このカクヨムには読み専の方も書く人もいると思いますが、どちらかというと書く人にお薦めの作品です。

作者さんの物語に対する愛情が深く感じられる作品でした。

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