さよなら、ライトノベル

作者 Han Lu

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★★★ Excellent!!!

物語は、ある小説家の青年の前にエルフの女の子が転がり込んでくる、といういかにもライトノベルにありそうな導入で描かれます。
しかし実はこの「それっぽさ」すらも作品テーマに引き込むための伏線です。

彼女は青年に対して「あなたの執筆するライトノベルが引き金になって、世界から想像力が失われて滅んでしまう」と主張するのです。

その滅びる理由というのが一見荒唐無稽なようで、ロジックとして納得がいくもので感心させられました。また話の流れの中で何度も「ライトノベル」「異世界もの」についての在り方を問いただす場面があり、読んでいて何度も共感し刺激を受けました。

やがて主人公たちはその滅亡をくい止めるために奔走することになるのですが、その中で「ライトノベル」「小説」といった一見すると内向きとも思える概念が、多くの人間が何らかのイメージを共有したとき集合的な無意識として世界に影響を与えてしまう、という多重構造的な展開になるのですが、それを優れた文章力で読みやすく描写しております。

このカクヨムには読み専の方も書く人もいると思いますが、どちらかというと書く人にお薦めの作品です。

作者さんの物語に対する愛情が深く感じられる作品でした。

★★★ Excellent!!!

カクヨムを乱読していると、たまにどうしようもなく惹きつけられる物語に出会います。
作者の個性がクッキリとしていて、それでいて物語として面白く、また一緒に想像し、考えさせるような物語。
これはまさにそんな物語でした。

タイトルにもあるように、ライトノベルそのものが一つのテーマ。
その存在を浮かび上がらせるために文学、ファンタジー、SFといったギミックで話が描かれていきます。
幻想文学の雰囲気もたっぷりあるのですが、ここには確固とした現実感もあるのです。
そういうギミックを使い、変転していく物語を追う中で、ライトノベルというジャンル、それがもたらすものに光が当てられます。
しかも話はそれだけでなく、ライトノベルがまた物語の鍵になっているという、凝りようです。

ちょっと例えが分かりづらいのですが、難しい話ではありません。
そこがすごいところでもあるのですが、語り口が軽やかで、物語世界にしっかりと引きずり込まれます。
可愛いキャラクターがいて、ラノベの主人公みたいな主人公がいて、幼馴染もいて、とにかく読みやすく楽しいのです。
で、読んでいくと構図そのものはラノベのテンプレート的なものであるということに気付くわけです。
この辺りのセンスがまた素晴らしいのです。

もっとも話はそれだけでなく、作者のもついろんな思想、世界のとらえ方、悪夢のような世界、想像力の源、などなど文学的モチーフもたくさん散りばめられています。
これは文章を書く人、物語を書く人であれば、多かれ少なかれモヤモヤと思っていたこと、それが形となって、言葉となって描かれています。
そう言ったものが混然一体となり、強力なモーターとなって物語を動かしてゆくのです。

まぁなんだか小難しい話をしてきたように思いますが、読みだせばあっという間に引き込まれます。
キャラクターの魅力に、物語の展開に、次が次が、とページをめくりた… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

 ライトノベルを題材にしたファンタジーと言われ想像できる範疇を、確実に超えてくる秀逸なストーリー。
 タイトルだけ見ると、一見ライトノベル否定者が書いた物語のように感じるかもしれない。が、それは間違っている。
 ライトノベルが好きならなおさら読め!

 ライトノベルは世界を破滅に導く。そして、ライトノベルは世界を再生する。
 Han Lu 様は物語をこよなく愛する作者様である事を断言しよう。

★★★ Excellent!!!

ほぼ1年間、ずっとこの物語を追いかけていて
終わったときには感動よりも「終わってしまうのか」という
残念な気持ちのほうが大きかったかもしれない。
とにかく連載が終わったあと、冒頭から読み返してみた。
1回目に読んだときよりも面白かった。次もそうだろうか。
そういうふうにして、この物語のことを忘れないと思う。

「ライトノベル」を語る
「ライトノベル」の体を取った作品でありながら、
ところどころ「純文学」的な効果も入っていて、
その融合は小説のひとつの到達点で、
またこの作品で描かれた世界の最終形なのかな、ということを
思ったりした。

全ての小説に関わるひとにこの作品を読んでほしい。
想像力のことを考えてほしい。
想像力のない世界のことを想像してほしい。
その世界を小説が救うことを想像してほしい。

とにかく挙げきれないぐらい名場面があるのだけれど、
右京がほたるに送った詩こそ一番美しくて
この物語の、全ての物語の根幹にあるのではないかと思った。


さよなら、ライトノベル。
R.I.P.(Return If Possible)

★★★ Excellent!!!

「ライトノベルを書くのをやめないと、世界が滅ぶ」

エルフのコスプレをした少女にそう言われて、誰がまともに話を聞くものか。
しかしいつしか、それは現実として世界を襲う。手始めに作家たちを。

滅亡の形は、誰の予想にもない。食い止める方法も、時間もない。
それを為すのはやはり、ライトノベルだ。

★★★ Excellent!!!

 って、読み終わってみて、タイトルと同じ感慨しか浮かびません。このタイトル、秀逸の一言です。これだけだと、ライトノベルを否定した悲観的な言葉かなって思うでしょう? そうじゃないんですよ! ネタバレになってもあれなんで、多くは語れませんが。

 これだけ難しい主題に真っ向から取り組んで、かつ魅力いっぱいな登場人物たちを配置しつつ、ぐいぐい引き込まれる物語を紡がれる作者様。やっぱり只者じゃありません。すごい。

「ライトノベル」ってなんだろう? 創作することにどんな意義があるのだろう。容易に答えのない普遍的な主題に挑んだ意欲作です。でも堅苦しくなくストーリーも楽しめます。たくさんの人に読んでもらいたいです!

★★★ Excellent!!!

幻想的な、いや見方によってはちょっとホラーな光景の中、シャツ一枚のコスプレ少女と出会い、思わず自宅マンションに連れ帰ることにした主人公はデビュー目前のラノベ作家。

目撃されいてれば通報間違いなしの事案だが、そんなことを考えるそぶりもなく御都合主義的に受け入れていく主人公は、ラノベ作家の卵というよりは、まさにラノベの主人公そのものだ。おまけに自室に合鍵で出入り自由の幼馴染の女子高生まで登場するのだから、これはもうラノベの王道的出だしとしか言えない。
だがこれは間違いなく作者様の仕込みだろう。

この物語は、ハイファンタジーの課長さん物語に始まり恋愛SFの嘘つき先輩、そしてSF西部劇の少年成長物語と、私たち読者を楽しませてくれた作者様の四作目に当たる。
これまでほぼ完成した物語を公開してきたという作者様だが、今回は完結を模索しながらの随時公開という話なのだから、もう目が離せない。

まだ登場人物も出揃ってはいないだろう今の段階だからこそ、先の展開への期待感はいやがうえにも高まる。
前三作を知っている読者でなくとも、きっと全力で応援したくなるはず!