民俗学の確かな知識に裏付けられた純正ホラー

「祟り」という言葉が身体の芯まで染み込んでくる気がします。こんなに怖いホラーを読んだのは何年振り…いや十何年ぶりだろう。
「本当の不安とは何が不安なのかわからないことだ」という一節はこの物語全体に当てはまります。何が起きているのかさっぱりわからない、だけど確かに何かがある。何かがいる。何かを見た…はずなのに。
その不安と焦燥感を誘導する表現力が素晴らしいです。地の文は感情を直接説明はしない、あくまでも淡々と「経験」と「行動」「思考」を書き下していくのですが、それが余計に想像力をかき立てる。

神道と民俗学に関する確かな知識が、最高レベルの文章力・構成力と融合して初めて書ける作品なのは疑いありません。

その他のおすすめレビュー

銀木犀さんの他のおすすめレビュー451