圧倒的な不安と薄気味悪さと神秘性で満ちる物語

冒頭、表面上は大きなことは何も起こっていないのですが、しかし、町と人々の様子から私たち読者はすぐさま感じ取ります、その水面下で巨大で禍々しい何かが蠢いていると。そして掴まされる「記憶にあるはずの神社が見当たらない」という謎と、それを基軸に連続する異様な事件の数々。なんだこれは、いったい何が起きている……そこまで漬かってしまったらもう後は読む手が止まらないです。結末まで一気です。

また、物語の随所で奥深くも丁寧に神道、考古学の知識で彩りと厚みが加えられ、単純なホラーでないレベルにまでこの作品を引き上げています。単に知識をひけらかすのでなく、謎解きの材料として自然に組み込まれており、作者様の力量や推して知るべしです。たぶんこの領域の引き出しの数はこんなものでは収まっていないはずです。

結末も謎に対して整理つけてクロージングしており、構成も含めて非常に質の高い作品でした。楽しませていただきました。

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