魚の声は雨音に似ていた

作者 高羽慧

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★★★ Excellent!!!

しなやかな体躯のきらめきを持つ魚たち。
そこには、なんらかの意志がたゆたゆと。

夢と現実の境目はどこにあるの。
現実と幻覚の境界線とはどこに。
過去と現実と未来が交錯した時。

ゆらゆらゆらゆら。
ふわり飛んでまた。


心揺さぶられる作品でした。
本当に、本当にありがとうございます!






★★★ Excellent!!!

妻の死。それがもたらしたのは記憶の混濁か、呆然自失に徘徊する彼の前に現れる手がかりは妄想なのか、それとも―ー。

日常と妄想が入り交じり、あやふやな世界と記憶に振り回される様は読んでいて不思議な感覚と、どうなるのだろうというピリッとした緊張感があって独特の雰囲気を醸し出しています。

そしてそれだけではなく、冷たい水面でも主人公に差し伸べられる手は温かで。周囲の助けや想いに触れていくうちに、妄執にかられた男がどうなってしまうのか、いつしか読み手側が心配するようになっていく。

手がかりを追って、彼が辿り着く”現実”はどれなのか。
妻。記憶。魚たち。

おおよそ起こり得ないような、絵画のような情景シーンで浮かび上がりつつ、画廊や絵描きの生活という興味深い部分が地に足を着けてくれる物語。

ホラーテイスト&ミステリーチックな夢の狭間で、彼の結末を探しましょう!

★★★ Excellent!!!

最愛の妻の死をきっかけに自らの過去を振り返る、というどこか哀しい物語の本作。ただ、その過程で創り出される幻想的な雰囲気は素晴らしいの一言でした。

ストーリーの時間軸は激しく行き来しますし、色とりどりの魚達に導かれていくうちに一体何が本当の出来事なのかが段々とわからなくなってきます。ただ、絵画や工芸などの要素が散りばめられた洗練された雰囲気が、そんな風にストーリーに振り回されることさえ心地よいと感じさせてくれるようでした。

そして、最終的には過去を見つめ直し…………という流れは、なんていうか、本当、こういうの読みたかったんですよ、ずっと。喜怒哀楽ではまさに「哀」の物語で、個人的にツボ過ぎて感謝でいっぱいになりました。

はぁ……、こういうの、書けるようになりたい。

★★★ Excellent!!!

エイとかナマズとか、割と大きな魚を高羽さんは頭の中で飼っていらっしゃるのだと思うんですよ。でないとなかなかこういった発想には辿り着かないんじゃないかな、と思うのです。実際に経験がないと想像できないことってあるじゃないですか。ましてや他人に想像させるなんて、無理です。私も電気ウナギの夢とか見たことないですし、やっぱり経験があると思うのです。無意識の中における恐怖体験の……

★★★ Excellent!!!


一本の電話が伝える妻の緊急入院から物語は始まる。

主人公が病院にたどり着いた時、すでに最愛の「妻」は帰らぬ人となっていた。
妻の顔と対面した瞬間「これは誰の顔だ」と困惑する主人公。
トントンと鼓動に合わせて疼くこめかみの痛みは、何を象徴しているのか?
あまりにも急すぎる「妻」の死の影には、いったい何が隠されているのか?

この物語はミステリーなのだろうかと思うやいなや世界は一変し、主人公は「妻」が制作したガラスの魚たちに、幻想的かつ非現実的な世界を連れ回される。
妻と暮らした日々の記憶を辿りたいはずなのに、行く先々で待っているのは知らない世界、覚えのない過去、欠落した記憶。

ここはどこなのか?
いったいいつの話なのか?
魚たちは何を見せようとしているのか?
主人公にもわからない。
もちろん読者にもわからない……。


謎解きのキーは冒頭の方にありますが、しかしこの物語の魅力は謎を追うだけでは味わえないでしょう。
推敲に推敲を重ねられた幻想的な文章と世界を、主人公とともに体験することにこそ、この物語の最大の魅力があると私は思います。

エピローグで明かされる主人公を取り巻く謎とあまりにも素敵なエンディング、そして爽やかな読後感はいつもながら作者様の真骨頂。

一人でも多くの読者が、主人公と彼を導く「魚」とともに、この独創的な世界を味わい尽くしてくれることを、切に願います。

★★★ Excellent!!!

喪った最愛の女性。そして失った記憶。指先をすり抜けていく、ものみな全てを象徴するかのように硝子の魚たちが煌めきながら導いていく。
揺らいでいるのは、世界。それとも……。
得体の知れない焦燥と不安に急き立てられながら、物語は辿り着くラストへ疾走していきます。

美しく幻想的な世界に惑乱される陶酔を、ぜひ、あなたにも。

★★★ Excellent!!!

突然妻を亡くした男。
そんな彼からは記憶までもが零れ落ちてゆく。
次第に朧気になる妻の姿。
消えてゆく共に過ごした記憶。記録。
遂には妻の遺した作品、ガラスの魚まで……。

魚がいざなう夢と現のあいだ。
魚が見せるそれは零れ落ちた記憶か。
それとも虚構か。
拾い集めた欠片を正しく並べたとき、彼には本当に安らぎが訪れるのか。
焦燥と不安に押し潰されそうになりながら物語を追いました。

美しい硝子の尾鰭に誘われて――




★★★ Excellent!!!

亡き妻の手になるオブジェ、ガラスの魚に誘われ、主人公の現実がゆらぎ、あえかに変容してゆく。
日常を逍遥しつつ、亡き妻の面影を求める姿は、現代の日々を繊細に描きながら神話的で、オルフェウスとエウリディケの物語も思わせます。
煌めくガラスの魚のあとを追って、ともすれば異界にいつ何時踏み込みかねない危うさが素晴らしい。
印象の美しさ、危うさや繊細さにおいて、梨木香歩や長野まゆみの幻想作品、あるいは「夢十夜」をどこか彷彿とさせながら、
現代の日常生活を描くには、それよりもはるかに艶やかで大人っぽい語り口。

この高水準の純文学作品を、無償で読めてしまうところが、カクヨムさんのすごいところだと、しみじみ思い知る今日この頃です。

妻の残した煌らかに儚いガラス作品、色とりどりの魚たちが、作品世界という水槽を美しく遊泳するかのようで、心のなかに、いつまでもあえかに心象風景として残るようです。
澄んだ水とガラスの魚の美しい印象。
この後、物語がどのように流れてゆくか、楽しみです。