哲学的ゾンビのドッペルゲンガーはいかが?

ヤバい
ヤバい
久し振りに鳥肌が立ちました

主人公の「わたし」はそもそも「死んで」います。自意識、自我のない哲学的ゾンビとなって生き返った「"わたし"」に頼まれ、わたしはなぜ自殺を選んだのか? を解き明かしていくのは、自分の人格をそっくり再現したAI。ドッペルゲンガーの「'わたし'」。
真実を理解してしまった瞬間「わたし」「'わたし'」「"わたし"」の他にもう一つ「ワタシ」が出現したような気がしました。自我を取り巻く社会との相互作用で産まれる、客観的存在としての人格。自意識の相転移。知ってはいけない、考えてはならない禁断のパンドラの箱が開いてしまったために生じてしまった、鋭い鋭い闇。

哲学的ゾンビ問題は題材からしてクラシカルな妄想ネタの宝庫だけれど、そこから出てくるIFを圧倒的な知識量が支えることで実現しているリアリティがまさにSF.です。科学技術上の設定だけじゃなくて、いかにもありそうな架空の判例がその後の社会を定義していった過程だとか、今作の舞台となるほのかなディストピアへ至った人文ディテールもやたら納得させられました。

これはしっかりと腰を据えて感想を書かねばとも思いましたが、やはり興奮さめやらぬ内にレビューを残させて頂きます。凄い物語でした。

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