最後の「嘘」にしびれる、優れたSFミステリ
- ★★★ Excellent!!!
読み終えたとき、思わず「やられたな!」と唸ってしまいました。まったく見事などんでん返し。自分が自分についた嘘は、自分自身をだますがゆえに真実と区別できなくなる、とはよくいいますが、そのことをつくづく思い出さずにはいられませんでした。また、その「嘘」のありようが、本作の主要な設定であるライフログAIの性質から演繹的に導かれる1つの論理的帰結であるのもよかった。作者が自身の編んだ設定をよく理解し、物語に巧みに反映させているのがわかります。素晴らしい腕前だなあ、としみじみ感心したことです。あと、中盤の議論のシーンは、これぞSFの華という感じで、とても楽しめました。
総じて、現代的な技術と哲学のエッジについての問題意識に貫かれ、なおかつミステリとしても完成度が高く、よい短編でした。次回作もとても楽しみです。