幕末を斬り抜ける、現代の剣道部員たち。

あらすじを一言で表現すれば、「剣道部員である五人の高校生たちが幕末にタイムスリップする物語」です。

この概要だけ読めば、不安を抱える人がいるかもしれません。高校生が幕末にタイムスリップして上手くやっていけるのか、ひょっとして安直な展開になってしまうのではないか、と。

しかし、そうであはりません。

だからこそこの物語は読む手を止めさせないのです。

プロットを破綻させることもなく、幼稚にさせることもなく、物語をしっかりと支えているのは、歴史と剣道に関する著者の豊富な知識であり、個性的なキャラクターたちであり、軽妙でありながらも簡潔に情景を伝える文章力であると言えます。

まず、高校生が幕末にタイムスリップした場合、寝食はどうなるのか?

坂本龍馬の暗殺を止めてしまったらどうなるのか?

仲間の一人が新撰組に捕らえられてしまったらどうなるのか?

知識がなければ考えられないでしょうし、想像力がなければ答えられないでしょう。しかし、物語はこれらの事件が次々と起こり、著者はそれに対する説得力のある回答を打ち出し、読者を飽きさせることなく、物語の中へ惹き込ませています。

その物語の軸となるのが、剛腕すぎる主将、女子高生として日本一の実力を持つ美少女剣士、歴史オタクの部員などの個性的なキャラクターたちです。彼らの、時にはコミカルであり、時には手に汗握るやり取りがなければ、物語は進みません。彼らの一人はとても強く、もう一人はただ強いだけではありません。今から読まれる方は、ぜひそれを読み取ってください。

そして、竹刀さえも一閃するようなその文章力を、ぜひ味わってください。

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